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判例 退職1ヵ月後の自殺も労災 (2007年5月号より抜粋) | |
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初任者に過酷な業務 症状軽快後再び悪化 いわゆる過労死事件、なかてもうつ病由来の自殺等は、業務と病気の関連性があいまいで、因果関係の立証が困難です。本事件では、保母が精神障害を発症し、退職1ヵ月後に自殺しました。裁判所は、業務起因性を認め、労働基準監督署の労災不支給の処分を取り消しました。各新聞の社会面でも大さく取り上げられた注目の判例を、ケース・スタディとして学びましょう。 K労基署事件 東京地方裁判所(平18.9.4判決) 精神病に起因する自殺は、本人が自らの意思で「死」を選択したかのような外観を呈します。脳心疾患等で倒れ、帰らぬ人となるのとは異なるため、ちょっと前まで、業務上の災害と認定されたケースはあまり多くありませんでした。 しかし、リストラが強行されるなか、業務上のストレスに押しつぶされて、自殺する労働者が増えています。そこで、厚生労働省では、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平11・9・14基発第544号)を示しました。 これにより、対象となる疾病や労災認定の要件が明確になりました。自殺については、「精神障害の病態としての自殺念慮が出現する蓋然性が高い病気について、患者が自殺を図った場合には、正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され(略)た状態で自殺が行われたものと推定する」扱いとなっています。 そうはいっても、現実に自殺が起きた場合、労災認定を勝ち取るのは、なかなか容易ではありません。本事件は、短大卒業後まもなく保母の仕事を始めた女性が、うつ病を罹患したものです。 保母としての経験が浅いにもかかわらず、仕事開始後間もなく職場内の先輩6人が退職したため、いきなり責任・負担の重い仕事を任されることになりました。このため、わずか勤続3ヵ月で心身症的疾患を発症して、退職のやむなきに至りました。 その後、本人は療養に努めていたのですが、約1ヵ月後に遺書を残して自殺しました。ご両親の無念は、察して余りあります。 父親は保育園の安全配慮義務違反を追及する一方、業務上の死亡であるとして労働基準監督署に労災認定を請求しました。しかし、労基署は、勤続が3ヵ月と短く、検査入院も1回のみで、求職活動開始後の死であったことから、請求を却下しました。 裁判所は、「業務は極めて過酷で、精神的にも肉体約にも重い負担をかけたことは明らかであり、当人ならずとも精神障害を発症させる内容である」と業務起因性を認めました。そのうえで、退職後、症状が軽快していたという主張に対しては、「うつ状態には気分変動があり、これを繰り返しながら回復していくものであることを考慮すると、自殺当時、うつ状態が再び生じていたと認めることとは何ら矛盾しない」と述べました。 たとえ退職した後に発生した自殺でも、業務との関連性が断絶するわけではない点に注意が必要です(本事件では、別に保育園の安全配慮義務違反も認められています)。
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