|
減給の制裁を賞与からする (2007年7月号より抜粋) | |
規律違反者に対し賞与から減給すれば制裁額を増やすことも可能? |
||
Q |
減給の制裁ですが、給与のほか、賞与から減額してもよいと聞きました。減給制裁の上限は「賃金総額の10分の1」と定められていますが、会社が賞与から差し引くと決めた場合、上限が大幅に広がります。それでも、違反にならないのでしょうか。 |
|
|
||
トータル額は変わらない 歳業規則で減給の制裁を定めた場合、既に働いて労働債権が発生しているにもかかわらず、その一部を減額して支払うことができます。「悪いことをしたから、当然」という考え方もあるでしょうが、使用者が無制限にこの権限を行使すると、労働者の生活が著しく不安定になります。 そこで、減給額には上限が設けられています(労基法第91条)。
よく「平均賃金の半分または賃金総額の10分の1以内」と覚えている人がいますが、10分の1まで引けるのは、複数事案が存在する場合に限ります。一事案につき平均賃金の半分(0.5日)ですから、非違行為(就業規則違反)を10回やれば、累計額は平均賃金の5日分(0.5日×10日)になります。しかし、一賃金支払期の賃金から直ちに5日分を引けるわけではなく、それが賃金総額の10分の1を超えるときは、10分の1が限度になるという意味です。 そこでお尋ねの件ですが、確かに「賞与も賃金であり、減給制裁の対象になる」(昭63.3.14基発第150号)という趣旨の通達があります。同通達では、さらに「賞与から減額する場合も、1回の事由については平均賃金の2分の1、総額については一賃金支払期における賃金、すなわち賞与額の10分の1を超えてはならない」とも述べています。 「それなら、賞与から10分の1を引いた方が得ではないか」というような意見も出てきそうです。しかし、これは早合点です。 賞与の10分の1を減給制裁として減額するという場合、非違行為を何度も繰り返し、その累計額が賞与の10分の1以上に達していることが前提になります。非違行為が1回なら、減給制裁額は平均賃金の半分で、たとえ賞与から差し引く場合でも、その限度を超えることはできません。総枠が大きくなっても、減給する事由がなければ、どうしようもありません。 減給制裁については、「限度を超えた場合には、その部分の減給は、次期の賃金支払期に延ばさなければならない」(労基法コンメンタール)と解されます。逆にいえば、今月引けなかった分は、来月以降にキャリーオーバーできるのです。 ですから、減給制裁の累計額が賞与の10分の1に及んだとき、賞与から1回で差し引くこともできますが、給与で何回にも分けて清算することもできます。 どちらの方法を取っても、早いか遅いかの違いがあるだけで、減給制裁の総額は変わりません。
|
||
労務相談と判例> 人事制度の相談 |
Copyright (C) 2007 Tokyo Soken. All Rights Reserved