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判例 退職勧奨目的の配転命令 (2007年7月号より抜粋) | |
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担当者を他部門に配転 退職誘導の不当な動機 「暗に退職を勧奨する目的で、本人の意に沿わない配転命令を出した」といった類の話は、ちょくちょく耳にするところです。会社には配転命令権があるので、直ちに違法とは言い切れないものの、あまり悪質だと裁判所も許しません。辣腕部長がやり過ぎて社内不和を醸し出し、畑違いの分野に転出させられた本事件では、配転無効の判決が出されました。 S電子工業事件 東京地方裁判所(平18.7.14判決) 元々、訴えを起こした製造部長は経費低減・業務改革にうってつけの人材ということで、社外からスカウトされてきました。その後の会杜側の対応をみると、営利を目的とする組織内の都合を優先し、「使い捨て」と非難されても仕方のないような処遇を行っていました。 製造部長達(一緒についてきた部下は次長に任命されていました)は、会社の期待に応えるため、着任早々から精力的に仕事に取り組み、コストダウン面で大きな成果を達成しました。しかし、その一方で、他部門との連絡・協調に欠け、社内的なきしみが生じていました。 このため、会社は2年が経過した時点で、突然、方針を転換し、部長・次長2人を営業部門に転出させました。新しい職場で待っていたのは、慣れない飛び込み営業と過酷なノルマ要求でした。 「入社時の約束と違う」、怒り心頭に発した部長は配転無効等を主張し、裁判を起こしました。第一の論点は、製造部長としてスカウトした人間を、他部署に配転することが許されるか否かです。この点について、判決文では、「就業規則上に配転に関する規定は存在しないが、部長たちが製造部門の経営改善のため限定された期間のみ就労することが予定されていたような事情は窺われず、長期の就労か予定されていたとみられる」と述べ、会社側に配転命令権があることを肯定しました。当初、スポットで担当する役割が決まっていたとしても、それが終われば、他部門へ配転可能と判断したのです。 しかし、配転命令権があるから、それですべて許されるわけではありません。第二の論点は、そこに「組織から排除する」等の不当な意図が存在したか否かです。 裁判所は、「会社方針の転換は、部長たちを採用するに至った動機とは相いれないものであるから、会社としては雇用を継続する必要はなくなったと考えられ、退職を期待する理由がある」と判断しました。さらに、「採用時の職種とは異なる営業強に異動することとなるにもかかわらず、その意向を全く聴取することもなく、突然、決定事項として配転を申し渡していること」等を理由に、「退職に追い込む意図を持っていたと推認される」と断じています。
本事件では、、配転先が「製造部長と感情的な対立があった営業部長の配下」であるなど、組織内のどろどろした人間関係をうかがわせる事情も存在します。配転を従業員間抗争の道具として使うような行為は、慎みたいものです。
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