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自然災害と労災 (2007年8月号より抜粋) | |
南の島に長期出張中に台風で被災したら業務上災害になるのでしょうか? |
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Q |
仕事上の都合で、「台風銀座」と呼ばれる南方の島に、従業員を派遣することになりました。就業中にケガをすれば労災保険の救済を受けられると思いますが、宿舎で就寝中に建物の倒壊等でケガをした場合、労災として認定されるのでしょうか。 |
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労災と認定されるかは宿舎の立地条件等による 暴風雨等の天災地変は「それ自体としては業務と無関係な自然現象」で、労働者は、事業主の支配下にあるか否かに関係なく危険にさらされます。ですから、「たとえ業務遂行中に発生したものであっても、一般的には業務起因性は認められない」(昭49.10.25基収第2950号)と解されています。 風の被害で記憶に新しいのは、昨年12月に北海道佐呂間町で発生した竜巻による死傷事故でしょう。このとき、事務所が倒壊して9人の労働者が死亡しましたが、労働基準監督署はどのように判断したでしょうか。 実は、全員について業務上の災害であるという認定が出されています(平18.12.18北見労基署発表)。 天災地変である竜巻による事故なのに、なぜ労災給付の対象になったのでしょうか。 これは、「業務の性質や内容、作業条件や作業環境、あるいは事業場施設の状況などからいって、災害を被りやすい事情にある場合には、業務に伴う危険(または事業主の支配下にあることに伴う危険)としての性質を帯びてくる」(労災保険法コンメンタール)からです。 竜巻事故にあった労働者は、トンネル工事のJV(ジョイント・ベンチャー)現場で働いていました。当然、事務所もプレハブ等の簡易構造のものでした。ですから、「事業場施設の状況」から、災害を被りやすい状況にあったと判断されたようです。 前期昭和48年の通達でも、「柱とトタン屋根のみで囲いのない作業場において作業中、地震により作業場が倒壊し下敷きとなった」ケースで、「作業場の構造の脆弱性による危険が地震とあいまって現実化した」ものであるから、業務上災害と認められています。 「(台風が原因で)就業中にケガをすれば労災保険の救済を受けられる」と早合点されていますが、たとえば、長期の操業を予定し、堅牢に立てられた工場内で被災した場合には、「業務遂行中であっても、業務起因性は認められない」と判断される可能性が高いでしょう。 ホテル・旅館等で就寝中の事故についても、同様に判断します。単に台風被害の多い地方で、台風により被害を受けても、自動的に労災とみなされるわけではありません。 しかし、「急傾斜の山で、表土はもろい地層で、地下水が浸透し不安定な状況であったところ、地震により山腹が崩れ落ち、事務所が埋没した」ケースでは、業務上災害と認定されています。 丈夫な建物であっても、立地条件の悪さが原因で事故が起きれば、労災給付の対象になり得ます。このようにケース・バイ・ケースで判断が違う点に注意が必要です。
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