事業場外みなしと深夜勤務 (2007年8月号より抜粋)  
     
 

労働時間のみなし制で働く営業マンが深夜勤務したら割増手当てが必要?

 

Q

当社では「事業場外みなし制」を採っています。先日営業マンが「深夜11時まで仕事をしたので深夜割増を支給してほしい」といってきました。1日9時間労働と協定しているので、当社始業時間を起算点にすると終業時刻は「6時とみなされる」はずですから深夜割増は不要ではないでしょうか。

 

 
 

A

深夜業の勤務時間にあわせた割増が必要

事業場外で働き、「労働時間を把握しがたい」ときには、一定時間労働したと「みなして」処理する特例が認められています(労基法第38条の2)。いわゆる「事業場外みなし」と呼ばれる仕組みです。

事業場外みなしには、

  1. 所定労働時間働いたとみなす(同条第1項)
  2. 業務遂行に通常必要とされる時間働いたとみなす(同条第1項ただし書き)
  3. 労使協定で定める時間働いたとみなす(同条第2項)

の3種類があります。しかし、「常態として行われている事業場外労働であって時間算定困難な場合には、できる限り労使協定を結ぶよう十分指導する」(昭63.1.1基発第1号)という扱いになっています。貴社では、所定の手続きを踏んで、1日9時間働いたとみなす協定を結んだのですから、当然、その協定が従業員を拘束します。

法律的にいえば、「みなす」とは「推定する」と違って、反証を示しても、みなしの効果は消減しないと解されています。ですから、午後11時まで働いたという事実を立証しても、割増は不要とお考えのようです。

しかし、「みなし労働時間に関する規定が適用される場合であっても、休憩、深夜業、休日に関する規定の適用は排除されない」(昭63.1.1基発第1号)のです。ですから、「労働者が現実に午後10時以降に労働した場合には、使用者はその時間に応じた割増賃金が必要」(労基法コンメンタール)という結論になります。1日9時間労働のみなしは有効なので、時間外割増は1時間分でOKです。

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