|
休職者と年次有給休暇 (2007年12月号より抜粋) | |
基準日が到来し新たに年休が発生すれば病気休職者でも請求可能ですか? |
||
Q |
当社では、労働基準法どおり、入社後6ヵ月で年休を与えています。病気で入院し、年休を使い果たした社員がいますが、まもなく年休付与の基準日が到来します。本人から休暇申請があった場合、再び年休を与える義務があるのでしょうか。 |
|
|
||
A |
休職発令前なら年休申請を認めざるを得ない 年次有給休暇は、一般に「心身の疲労を回復させ、ゆとりある生活を実現させる」のが目的であるといわれます。 しかし、労働基準法上、ストライキのために取得することは許されませんが、それ以外、利用目的に制限はありません。「病気欠勤等に充当することも許される」(昭24・12・28基発第1456号)と解されています。 ここまではいわば常識で、実際、職場でも、「今日は具合が悪いので、年休で処理してください」といった申し出が頻繁にあると思います。しかし、普通は、年休をすべて消化した後、欠勤状態に移行し、一定期間が経過した後、私傷病休職が発令されるというパターンをたどります。 その流れを断ち切って、欠勤状態から再び年休を取得可能な状態に戻れるのか、というのがご質問の趣旨だと思います。 しかも、お尋ねのケースでは、基準日が到来し、再付与された年休を使いたいというのですから、会社として拒否したくなるのは、よく理解できます。年休の発生要件は、過去1年間(最初は半年)の出勤率が8割以上であることですから、多少、欠勤期間があっても、次年度の年休が付与される可能性は否定できません。 しかし、年休消化、欠勤、私傷病休職というパターンは、絶対的なものではありません。年休を消化せず、いきなり欠勤という選択も可能ですし、たとえば1日年休、1日欠勤というパターンを繰り返すこともできます。 法律上は、私傷病休職の発令日が分かれ目となります。前掲通達では、「休職発令により、会社に対してまったく労働の義務が免除されることとなった場合、労働義務がない日について年休を請求する余地がないことから、これらの休職者は、年次有給休暇請求権の行使ができないと解する」と述べています。 私傷病休職が開始した後は、たとえ年休付与の基準日が到来し、新たな年休が発生したとしても、会社は申請を拒否することができます。 しかし、未だ休職が発令されていない段階では、労働義務が消滅していないので、年休の請求も可能です。お尋ねのケースでは、年休申請を認めざるを得ませんが、実務的には、むしろ欠勤の中断に注意すべきでしょう。 細切れで年休を取得されると、いつまで経っても「欠勤が連続して1ヵ月に至った場合」等の条件を満たし、私傷病休職の発令ができないおそれも生じます。ですから、「1ヵ月以内に同一事由で再び欠勤した場合には、前後の期間を通算し、私傷病休職の規定を適用する」等の規定を整備しておくのが、「転ばぬ先の杖」になります。
|
|
労務相談と判例> 休暇、休日の相談 |
Copyright (C) 2007 Tokyo Soken. All Rights Reserved