偽装出向の処分 (2007年12月号より抜粋)  
     
 

派遣法違反を免れるため「出向」扱いにしたらどんな処分を受けますか?

 

Q

「偽装請負」が違法なのは、お役所の指導等で飲み込めました。しかし、最近では、「偽装出向」なる形態も登場していると聞きます。違法性のない通常の「出向」と、どこがどう違うのでしょうか。違反すると、ペナルティー等が科せられますか。

 

 
 

A

実態に即して派遣法等に基づく処分が行われる

派遣契約を結ぶと、派遣法の適用を受け、受入期間が制限される(自由化業務は最長3年等)ので、面倒だと敬遠する経営者が少なくありません。派遣ではなく、自社の社員同様に指揮命令できる雇用スキームはないか、色々考えた結果、「偽装出向」という手段が編み出されました。

出向(在籍出向)の場合、出向元事業主と労働者の間だけでなく、出向先と労働者の間にも労働契約関係が生じます(二重の労働契約関係)。

派遣は、「自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令を受けて働かせることをいい、他人に雇用させることを約するものを含まない」(派遣法第2条第1号)と定義されています。出向は、他人と労働者の間に雇用の約束が生じるので、派遣に該当しません。

しかも、請負と違って、出向先企業が出向労働者に対して直接指揮命令を下すことができます。正に願ったりかなったりですが、その態様によっては、違法とみなされるおそれも存在します。

本来、二重の雇用契約関係が存在する場合、形式的には職業安定法第44条で禁止する「労働者供給事業」に該当します。しかし、職業安定法違反で摘発されないのは、通常の出向が、

  1. 雇用機会の確保
  2. 経営・技術指導
  3. 職業能力開発
  4. 企業グループ内の人事交流

を目的として、「業として」行われていないからです。業として行われている場合の扱いですが、法違反については、契約の形式でなく、実態に即してどの法律を適用するか判断します。「出向という名称が用いられたとしても、実質的に派遣とみられるケース」では、派遣法に基づいて処分が行われます(労働者派遣事業関係事業取扱要領)。

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