出向元と労働条件が違う場合 (2008年2月号より抜粋)  
     
 

所定時間が本杜より30分長い出向で労働条件の調整が必要に??

 

Q

関連会社の要求に応じ、課長職で若い出向杜員を1名受け入れました。ところが、関連会社の所定労働時間は7時間半、当社は8時間です。本人は、関連会杜の基準に従い、他の杜員より30分早く帰ると言い出して、困っています。このような場合、一般にはどのように処理されているのでしょうか。

 

 
 
A

本人と出向元で協議が必要

出向社員の労働条件は、出向元と出向先が話し合って決めます。出向社員の勤務時間帯を、必ずしも出向先の始業・終業時刻に合わせる必要はありません。しかし、フレックスタイム制や裁量労働制の職場ならいざ知らず、1人だけ違う時間帯で働く人間がいると、仕事の連携が難しくなります。その出向社員が、部下を持つ課長さん等ならなおさらです。

多くの企業では、課長職以上を時間外割増等の対象外としています。労働時間の適用外となる管理監督者については、本人の裁量で早帰りすることも認められます。しかし、毎日、課長が他の課員より30分早く帰ったのでは、仕事になりません。

出向元とどのような約束をしたかにもよりますが、課長相応の働きをしてもらわないと困ります。

問題は、課長という肩書きで出向してきても、出向元では一般社員として時間外の対象となっているケースか多いことです。この場合、本人にとっては、毎日30分間、サービス残業をさせられるのと同じ結果になります。ですから、一概に「本人のわがまま」と決め付けるわけにもいきません。

そもそも、1日の所定労働時間7時間半という約束で入社した社員を、所定労働時間八時間の会社に出向させることが許されるのでしょうか。

この点について、判例(神鋼電機事件、津地決昭46・5・7)では、「出向元としては不利益を解消するだけの条件を示すべきであり、かかる条件を提示することもなく、本人の意向を無視して行った出向命令は、その効力を生じ得ない」と述べています。逆にいうと、出向を命じることは可能だけれど、手当や出向補償金のような形で不利益を解消する必要があるという結論になります。

一般には、管理職以外の社員が出向先で時間拘束の対象とならない役職に就いたときは、出向役職手当といった名目で加算がなされるようです。もちろん、加算がないと違法となるのではなく、本人が同意すれば補償なしというケースもあり得ます。

若手社員を管理職として社外出向させるのは、幹部教育の一環で、本人としては将来に向けたステップ・ボードと理解すべきでしょう。ですから、一昔前には、あえて補償なしで出向に応じる「やる気をみなぎらせた」若手も少なくなかったようです。

いずれにせよ、余計に働く時間分の手当を上積みするか否かは、本人と出向元で解決すべき問題です。貴社がいきなり本人の頭越しで交渉するのは、避けるのがよろしいでしょう。

 

▲画面トップ


 
  労務相談と判例> 人事制度と懲戒の相談

Copyright (C) 2008 Tokyo Soken. All Rights Reserved

東京労務管理総合研究所