|
労働契約法に基づく安全配慮義務 (2008年5月号より抜粋) | |
労働契約法に基づき使用者が従業員の安全管理で注意すべき点は? |
||
Q |
労働契約法が施行され、事業主に対し「安全配慮義務」が課せられたと聞きます。会社として具体的に何をすれば、義務を果たしたことになるのでしょうか。違反したとみなされれば、どのような罰則が科せられるのでしょうか。 |
|
|
||
A |
危険を予見し回避措置を 労働契約法には罰則なし 昨年末の国会で労働契約法案が可決成立し、早くも今年3月1日から施行されています。労働契約法は「労働契約に関する基本事項を定めることにより、(略)労働関係の安定に資する」(第1条)ことを目的としますが、基本的には過去に確立した判例等を法律化したものです。「無から有を生む」という形で、新しい義務を創設するものではありません。 安全配慮義務についても、過去に参考となる最高裁判例等が存在し、それに依拠する形で以降の法律トラブルも処理されています。 しかし、中小・零細レベルの事業主は判例に対する理解が十分とは言えないため、周知・啓発の意味も込め明文化がなされたものです。 新たに措置すべき義務が定められたわけではありませんが、これまで安全の問題に十分な配慮を尽くしてこなかった会社では、新法をキチンと理解し、必要な対策を講ずるべきでしょう。 労働契約法第5条では、「使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」よう求めています。有名な判例に自衛隊車両整備工場事件(最判昭50・2・25)と川義事件(最判昭59・4・15)がありますが、このうち民間企業を扱った後者では、安全配慮義務を「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し、又は使用者の指示の下に労務を提供する遇程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」と定義しています。 その後の判例をみると、災害発生を予見できたか否か(予見可能性)、社会通念上相当とされる防止手段を尽くしていたか(危険回避努力)の両面を検討し、事業主の責任を判断しています。 具体的にどのような措置を講じるべきか、法律では列挙されているませんが、概ね次のような内容を含むと解すのが通説です(中災防編「経営者の労働災害防止責任・安全配慮義務」)。
このほか、いじめや自殺防止等も現代的課題として含まれるでしょう。 違反した場合、労働契約法には罰則がありませんが、民法第715条(使用者責任)、第415条(債務不履行)等を根拠に、事業主に多額の損害賠償を命じる判例が多数存在します。
|
|
労務相談と判例> 安全衛生の相談 |
Copyright (C) 2008 Tokyo Soken. All Rights Reserved