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出張命令に社員が従わない場合 (2008年6月号より抜粋) | |
前泊で出張するよう命じたけれど従わなかった社員を処分できますか? |
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Q |
月曜日の朝一番で、遠方の得意先と商談するため、従業員に前泊で出張するように命じました。しかし、当人は、知人の結婚式に出席した後、月曜の早朝に車を運転し、現地に向かったようです。業務命令違反ですが、どのように対応すべきでしょうか。 |
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A |
指示内容に必要性があれば懲戒の対象に 業務命令といっても、転勤発令から、日常の業務指示に至るまで、さまざまな種類・レベルがあり得ます。業務命令を下す根拠は労働契約に求められますが、無制隈に権利を行使できるわけではありません。今年3月に施行されたばかりの労働契約法でも、「懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、権利濫用であると認められる場合は、無効とする」(第15条)と定めています。 お尋ねのケースでは、出張命令に合わせて、「前泊するように」という指示を与えたものですが、前泊そのものが業務の遂行に不可欠な条件であるのか、考える必要があります。たとえば、マイカーを業務で使用中に事故が起きた場合、会社が運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)を負うので、マイカー出張を制限するケースもみられます。こうした規定に違反して、マイカーを無断で業務使用したとすれば、その責任を問うことも可能です。 しかし、「電車もないだろうから」といった理由で、前泊という手段を勧めただけなら、そもそも「業務命令」と呼べるのか大いに疑問です。従業員側も、「結婚式出席」という事情を話して、代替案を相談すべきだったでしょう。 前泊については、「出張中の休日は、旅行中の物品監視等の指示がある場合のほかは労働時間として取り扱わなくてよい」という解釈例規があります(昭27.3.17基発第461号)。賃金は不要ですが、本人の拘束負担等を考え、出張手当を支払う会社も少なくありません。この場合、当日、現地に向かったにもかかわらず前日分の手当も請求したとすれば、それは懲戒の対象になり得ます。
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