期間契約者の途中退職 (2008年9月号より抜粋)  
     
 

パートが3日前に突然辞職願を持ってきたが認めるほかないのでしょうか?

 

Q

当社では、1年契約のパートを使用しています。パートについても、正社員同様、2週問前に退職願を持ってくれば退職を認めていました。ところが、3日前になって、急に「辞めたい」と申し出てきたパートがいて、対応に困っています。無理に引き止める気もありませんが、法律的には、どう扱うべきでしょうか。

 

 
 
A

損害賠償請求は現実的に難しい

正社員のように期間の定めのない契約を結んでいるケースと、パートのように期間を限定しているケースでは、民法の適用条文が異なります。

民法第627条では、「雇用の期間を定めなかったときは、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は解約の申し入れから2週間を経過することによって終了する」と規定しています。

ですから、正社員は、2週間前に退職願を出せば、それにより雇用関係を終わらせることができます。注意が必要なのは、使用者側は、労働基準法第20条に基づき、30日前に予告しなければいけない点です。労基法の規定が、民法に優先します。

一方、民法第628条では、「雇用の期間を定めた場合であって、やむを得ない事情があるときは、直ちに契約を解除することができる」と規定しています。期間契約のパートには、原則としてこちらの条文が適用されます。労使双方とも解約により損害が生じれば、それを賠償する責任を負います。

本人が2週間前に申し出てきても、「やむを得ない事情」がなければ退職の効力は生じません。しかし、会杜が合意解約に応じるのは自由です。ですから、3日前の申し出であっても、円満退職として処理しても差し支えありません。

平成20年3月施行の労働契約法第17条では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、(期間満了前に)労働者を解雇することができない」点を明確化しました。

行政解釈(平20・1・23基発第0123004号)では、「期間途中でも一定の事由により解雇できる旨を労使が合意していた場合でも、『やむを得ない事由』があるか否かを個別具体的な事案に応じて判断する」と述べています。会杜が契約書上に「業務の都合により途中解雇できる」と一筆書いておいても、「やむを得ない事由」がなければ解雇は認められないのです。

しかし、労働契約法は労働者側について何も述べていません。ですから、「2週間前に退職を申し出た場合、会杜はその可否を決定し、本人に通知する」といった規定を置くことも許されます。民法上、会社はやむを得ない事由がなければ解約に応じる義務はないのですが、事情を考慮して退職を認める余地を残すわけです。

実際問題として、パートが勝手に辞めるのを引き止めるのは難しく、賠償請求もほとんど認められません。むしろ、自己都合退職の手続を明確にし、円滑に問題処理する方が賢明といえるでしょう。

 

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