専ら派遣は可能か (2008年9月号より抜粋)  
     
 

定年退職者を派遣会社で再雇用して本社に派遣するのは可能?

 

Q

定年再雇用者が増えるのに合わせ、社内で「全員を派遣会社に移して、そこから派遣を受ける形にしたらどうか」というアイデアが出されました。当社で労働力を活用できないときは、他社に派遣に出して、収入を得ることも可能になります。対象者は転籍という形で派遣会社に移しますが、問題があるでしょうか。

 

 
 

A

新設の受け皿会社は、派遣という形で貴社に人材を還流させます。派遣法第48条第2項では、「派遣事業が専ら派遣の役務を特定のものに提供することを目的とする場合、勧告することができる」と規定しています。特定企業の労務管理を代行するため派遣会社を用いるのは、「労働力の適正な受給を図る」という派遣法の趣旨に抵触します。このため、いわゆる「専ら(もっぱら)派遣」を規制する規定を設けているものです。

貴社では、「余剰が出れば、他社にも派遣に出す」という建前を採っています。会社の定款等にも、不特定多数を相手として派遣事業を営む旨、記載する予定ではないでしょうか。

しかし、「絵に描いた餅」で実態が伴わないと、問題が生じます。定款等の事業目的だけでなく、運営実態にも照らして、客観的に勧告すべきか否かを判断します。派遣事業関係業務取扱要領では、「宣伝、広告等を随時行わず、顧客を確保する努力が客観的に認められない場合」には、専ら派遣とみなすと述べています。

ただし、特定企業のみを対象とするケースでも、「雇用機会の確保の難しい労働者の雇用の継続を図る」目的であれば、例外として認められます。具体的には、「派遣労働者のうち、10分の3以上が60歳以上の者(他の事業主の事業所を60歳以上の定年により退職した後雇入れたものに限る)であること」(派遣法施行規則第1条の3)という条件をクリアする必要があります。高齢者の受け皿会社として派遣形式を利用することも、法的な要件を満たせば可能です。

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