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リハビリ出勤社員の傷病手当金 (2008年10月号より抜粋)

会社に「座っているだけ」のリハビリ社員は傷病手当金の支給対象に?

 

Q うつ状態だった社員が徐々に回復してきたので、出・退勤のリズムを作るという意味で、ならし出社させたいと思います。リハビリ出勤させると、傷病手当金がストップすると聞きますが、まったく仕事をさせないという条件付ならどうでしょうか。

 

A 受給はむずかしい

 

傷病手当金については、健康保険法第107条に「報酬を受けることができるときは支給しない。ただし、報酬が手当の額より少ないときは差額を支給する」という規定が存在するので、よく誤解を生じます。この規定が適用されるのは、あくまで傷痛手当金の要件を満たす場合に限られます。つまり、待期期間経過後、療養のため労務不能という条件を満たす必要があります。

 

本人は全休しているのに、一部の賃金が支給されている場合(たとえば3分の1)には、傷病手当金(標準報酬の3分の2)と賃金の差額が支給されます。しかし、同じ会社で、今までより軽い仕事に就いたり、医師の指示でリハビリ出勤(たとえば半日)したりする場合には、労務不能という前提が崩れてしまいます。出勤した場合には、原則として、傷病手当金が全額支給されず、差額調整の対象になりません。

 

ですから、リハビリ出勤は金銭的には割の合わない仕組みで、会社が収入減を補填することにより、出社を後押しする等の配慮が必要でしょう。

 

しかし、うつ状態で閉じこもっていた人が、医師はまだ労務不能と認めるけれど、とりあえず出社し、まったく仕事をしないというケースも考えられます。資料室等に行ってもいいし、調子が悪ければ、出社・退社も自由という扱いで、会社は往復費と食費のみ賃金として補助するとしましょう。

 

この場合、労務不能で一部賃金を受け取るのですから、差額のみ支給されると解釈する余地もありそうです。ただし、そうした実例は寡聞にして聞かず、社会保険事務所と事前に相談し、確認を得たうえで実施すべきでしょう。