割増賃金の単価 (2008年11月号より抜粋)  
     
 

欠勤が多い杜員の時間外労働割増賃金を低く計算する方法はないか?

 

Q

業務が集中する時期に、3日間無断欠勤した杜員がいます。当然、賃金カットをしますが、割増単価の計算にも欠勤分を反映させたいと考えています。単価を引き下げて割増賃金の総額を減らすのは、法的に問題があるでしょうか。

 

 
 
A

満勤時の単価が計算の基礎になる

時間外労働の有無は、原則として、1日8時間を超えた時点、1週40時間を超えた時点で「確定」します。たとえば、月曜、火曜に10時間ずつ働き、水曜から金曜まで3日欠勤したとします。この場合も、月曜、火曜2時間ずつ時間外が発生した事実を消すことはできません。

1週20時間しか働いていないのに、この週には4時間分、2割5分増しの割増賃金を支払う義務があります(もちろん、3日分の賃金カットは可能です)。

そこで、「欠勤分を反映させて、割増賃金の単価を引き下げる」という発想が生まれてきたのでしょう。確かに、平均賃金を計算する際には、欠勤があれば、それだけ1日分の平均賃金が下がります。これは、平均賃金の考え方が、平均で何時間働いたかに関係なく、1日分の受取賃金額の平均を計算するからです。

しかし、割増賃金の単価はそれとは違った定め方となっています。割増賃金は、「通常の労働時間または通常の労働日の賃金の計算額」に割増率を乗じて計算します(労基法第37条)。

通常の労働時間または通常の労働日の賃金の計算額は、「1時間当たりの割増単価」に時間外労働時間数を乗じた額と定義されています。1時間当たりの割増単価は、労働基準法施行規則第19条で定める計算式に基づいて算出します。

たとえば、月給制の人なら、原則として「月によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年問における1月平均所定労働時間数)で除した金額」が割増単価になります。

基本給30万円、職務手当4万円、合計34万円(家族手当等の除外賃金項目は除きます)の従業員の年間所定労働時問数が2,040時間だとします。

月の平均所定労働時間数=2,040時間÷12月=170時間
割増単価=34万円÷170時間=2,000円

計算の際には、「月極め」の賃金額を用い、欠勤等があったとしても控除しません。割増の単価は、「通常に働いたら1時間当たりいくらか」という計算をするのですから、欠勤は考慮しないのです。

仮に、どうしても欠勤分を分子の賃金から差し引きたいなら、分母の労働時間からも欠勤時間数を控除しなければならない理屈です。一結果的には、単価の水準はほぼ一定になります。

ですから、法律上は、わざわざ欠勤分の調整方法は規定していません。欠勤等があったしても、「月極め」の賃金を用いて割増単価を計算し、割増賃金を支払うのが正解です。

 

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