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判例 従業員に振込み手数料負担義務ない (2008年11月号より抜粋) | |
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給与天引きは違法 協定の拘束力を否定 「あそこの会社では、営業にかかる経費の一部を、従業員に負担させている」といった話を時々耳にします。しかし、各種経費は受益者負担が原則ですから、あまりに不合理な契約を結ぶと問題が生じます。本事件では、会社は顧客が保険料を振り込む際の手数料を従業員の給与から天引きしていましたが、裁判所は「賃金控除協定があっても不可」と判示しました。 F保険事件 東京地方裁判所(平20.1.9判決) 大手派遣会社が、「顧客トラブルの解決費」として、派遣社員から一定額を天引きして、大問題となりました。この問題を受け、今年4月から適用されている「日雇派遣指針」(平20、厚生労働省告示第36号)でも、「賃金の一部を控除する場合には、購買代金、福利厚生施設の費用等事理明白なものについて適切な労使協定を締結した場合に限り認められることに留意する」よう求めています。 労働基準法第24条の賃金控除協定を結ぶこと、「事理明白なものに限ること」(昭27.9.20基発第675号)という二つの要件を満たす必要があります。 本事件で、会社は保険の直販社員、外務員に対して、保険料口座振替に要した費用を本人負担とする新しい給与体系を導入しました。口座振替手数料は、元々、年間保険料に上乗せする形で契約者に負担させていたので、まさに二重取りです。 しかし、会社は、多数組合と賃金控除協定を結び、従業員の給与から手数料を控除する形で、従業員負担を既成事実化しました。多数組合に加入していない従業員2人が、これに反対して裁判を起こしました。 裁判所は、ほぼ全面的に従業員側の主張を認め、控除は認められないと判示しました。労基法第24条の協定は、36協定などと同様に、遇半数労組を当事者とすれば足り、少数組合と個々に結ぶ必要はありません(昭23.4.5基発第535号)。しかし、これは「全額払い違反の刑事罰の免罰としての効力」が認められるという意味で、「少数組合がこれに同意しておらず、個々の組合員も同意していない場合においては、効力は及ばない」と述べました。 さらに、手数料は「顧客の保険料支払方法にかかわる費用であり、募集に当たった外直社員が必然的に負担すべきものではないので、当該費用が労働に関係して生じているものと見る必要はなく」、結局、控除が可能な事理明白な費用とは解されません。 実費精算という主張に対しては、次のように判示しました。「手数料は保険料に上乗せされ、その保険料に一定の換算率を乗じて出来高給を支給しているから、出来高給のなかに手数料の一部が含まれるが、換算率を掛けた後の金額は全額ではない。給与から控除する金額は手数料と同額だから、実費精算とはいえない」。 法で定めた賃金控除協定を結んでいても、それだけで「不合理な経費負担」を従業員に押し付けることはできません。自社の控除項目を、改めてチェックする必要があるでしょう。
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