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判例 寮で待機は労働時間でない (2008年12月号より抜粋) | |
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高度に労働から解放 賃金の支払いは不要 突発的な事態に備え、待機している時間は賃金の支払いが必要なのでしょうか。寮でテレビをみたり、時には外出したりという状態で、ガス工事の修理要請を待っていたケースで、従業員側が時間外割増請求の訴えを提起しました。東京地裁は、「高度に労働から解放されていた」という実態を重視し、労働時間に該当しないという注目すべき判断断を下しました。 O工業事件 東京埴方裁判所(平20.3.27判決) ガス配管請負業を営む会社は、ガス漏出等の事故に対応する専門の従業員を雇用していました。従業員はシフト勤務に従事していましたが、修理依頼があれば現場に駆けつけ、要請がなければ寮の自室で過ごしていました。 勤務の実態は、判決文によると「不活動時間においては、自室でテレビを観賞したり、パソコンに興じるなどしていた。外出には特段の規制はなく、携帯電話を所持して、買い物に出たりしていた」というものでした。 事業主の感覚からすると、「そんなもの、もちろん、労働時間に当たるはずがない」といいたくなるところでしょう。しかし、警備員のケースで、最高裁は「仮眠室で仮眠し、警報・電話連絡があればこれに対処する必要があれば手待ち時間(=労働時問)で賃金の支払いが必要」と判示しています。訴えた従業員側は、この判例を念頭に置いていたのかもしれません。 本事件でも、従業員は修理の要請があれば、可能な限り迅速に現場に赴いて、工事に着手することを義務付けられていました。警備員のケースと、相通じる点が少なくないようにもみえます。 しかし、裁判所は、待機していた時間の性格を具体的に検討し、判断を下すという手法を採りました。
こうした実態を踏まえ、「不活動時間の活動は、社会通念に照らすと、通勤労働者が自宅で過ごすのとさほど異ならない」と評価しました。ですから、「高度に労働から解放されていたとみるのが相当であり、指揮命令下に置かれたと評価することはできない」という結論になります。 事業者側にとっては、納得のいく判示でしょう。ただし、注意が必要なのは、「自宅で呼出待機と同様の状態にあった」からといって、自動的に労働時間に該当しないともいえず、それはそれで別に「実態に即した具体的判断」が求められる点です。 自宅での呼出待機の場合も、やはり、その頻度、拘束の度合い、対応の迅速性(本事件では、出勤体制が整い次第、速やかに出動するのを要請するにとどまります)、呼び出しに応じなかった場合のペナルティーの有無・程度等が問題となるでしょう。いずれにせよ、本判決は地裁段階で、今後の展開から目が離せません。
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