出張に上司同行の場合の労働時間 (2009年2月号より抜粋)  
     
 

上司同行で出張した場合は労働時間把握できるので賃金支払必要?

 

Q

出張等に行く場合移動時間は労働時間にならないといいます。しかし、総務課員が、「上司のお供をする場合は、労働時間になる」という情報を仕入れてきました。今後、出張時の賃金計算を変更する必要があるのでしょうか。

 

 
 
A

移動中の時間は労働時間にならない

厚生労働省の行政解釈(昭23・3・17基発第461号)では、「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、物品の監視等別段の指示がある場合のほかは休日労働として取り扱わない」と述べています。これを準用する形で、一般に「平日の移動中も、原則として労働時間に該当しない」と解して、実務処理がなされています。

お尋ねの総務課員は、この移動時間の取扱いではなく、事業場外みなしの話と混同しているのだと思います。多くの会社では、就業規則で「従業員が出張した場合、所定労働時間勤務したものとみなす」と規定しています。これは、労基法第38条の2(事業場外みなし)を根拠としています。

しかし、出張すれば、常に労働時間みなしが適用されるわけではありません。次のケースでは、キチンと労働時間を把握する義務が生じます(昭63・1・1基発第1号)。

  1. グループで事業場外労働に従事し、その中に時間管理する者がいる場合
  2. 無線やポケットベルで随時使用者の指示を受けながら労働している場合(現在、大多数の社員は携帯電話を持っていますが、「随時使用者の指示を受ける」状態にあるか否かが、重要な判断要素となります)
  3. 訪問先、帰社時刻等、具体的な指示を受けたのち、それに従って業務に従事する場合

「みなし処理」と「実労働時間把握」のどちらかを選択するのではありません。1.〜3.に該当すれば、必ず「実労働時間把握」の方法による必要があります。

「上司のお供をする場合」は1.に含まれますが、単なる身分上の上下が存在するだけでは十分でなく、事業場で「始業・就業時問を現認する立場」にあることが前提となります。

「時間管理する者」は、出張中、何時から何時まで実際に労働に従事したか、把握しなければいけません。その際、「移動時間が労働時間にあたるか否か」はその態様に応じて客観的に判断されます。みなしの対象でなくなったからといって、自動的にそれが労働時間に変化するわけではないのです。

たとえば、列車の座席に座り、飲食しつつ、上司の話に耳を傾ける(あるいは、会話する)のは、よくあるパターンです。どうしても職場関係の話題に偏りがちですが、それが正式な会議等に当たらない限りは、労働時間にカウントされません。

一方、交通機関内にいても、上司の指示に従って、モバイル用のパソコンで商談用資料の作成等に従事していれば、それは労働時間となるでしょう。

 

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