判例 C評価者の再雇用拒否は可能 (2009年5月号より抜粋)  
   

 

 
 

労使協議で基準設定 高年法に違背しない

高年齢者法により60歳代前半高齢者の雇用を確保する措置義務が課せられていますが、労使協定の締結により基準を満たさない者の継続雇用を拒否できます。事業主としては、できる限り厳しく基準を設定したいところてしょう。本事件で、裁判所はC評価者(全体の20%程度)を対象外とする協定は高年齢者法の趣旨に反し仁いと判示しました。

N運輸事件 岐阜地方裁判所(平20・9・8判決)


日本経済が活力を失い、企業業績も落ち込んでくると、定年退職者の継続雇用も荷が重く感じられます。しかし、「景気が悪化」したからといって、それが高齢者の再雇用等を中止する免罪符になるわけではありません。

業績低迷により、継続雇用を拒否するのは、解雇に準じる措置です。ですから、基本的には、整理解雇の要件を満たす必要があるでしょう。雇用関係の解除に当たっては、慎重な検討が必要です。

そこまで至らないケースでは、労使協定で定めた再雇用基準を見直す等の措置を講じて、継続雇用者を減らすよう努めるほかありません(中小企業は、経過措置として就業規則で再雇用基準を定めることも認められています)。

本事件は、再雇用を拒否された高齢者(少数労組の執行委員長)が、「再雇用規定は高年齢者法に違反している」と訴えたものです。労使協定で基準を定めても、それが「原則として継続雇用を保証する」高年齢者法の趣旨に著しく反すれば、無効とみなされる可能性を否定できません。基準の合理性が、争点となりました。

会社の再雇用基準では、「定年までの一定期間、1回でもCランクと査定されれば、再雇用を拒否する」と定めていました。実態として、毎年、C評価は従業員の20%程度を占めていたので、対象期間が複数年にわたれば、3割、4割の拒否者が出ることも予想されます。

実務的にはかなりハードルの高い基準で、これより会社側に有利な内容で労使協定を結ぶのは、なかなか容易ではないでしょう。

この基準に対して、裁判所は、「高年齢者法は、各企業の実情に応じて労使で協議のうえ基準を策定することを求めているのであり、当然に希望者全員を再雇用すべきものとしているとは解されず、会社の経営状況、同業他社(運輸業)との非常に厳しい競争のなかで、安全面や能効率面で一定のレベルに達した者を再雇用する必要があったと認められ」るので、C評価者拒否という基準も「相当なもの」と是認できると判断しました。

ちなみに、原告従業員は、定年の約一年前にレッカー車の手配を要する脱輪事故を起こしていて、裁判所は「降雪があったとしても、軽微な事故とはいえない」と述べ、再雇用拒否を正当化する理由の1つとして認定しています。

原告は「少数労組の執行委員長」を狙い撃ちにする不当労働行為だとも主張しましたが、裁判所は「他の従業員の起こした事故に対する人事評価と比べてもバランスを欠く点はない」ため、違法性なしと判断しています。


常時300人以下の労働者を使用する事業主(中小企業の事業主)は、労使協定を締結するため努力しても協議が整わないときに限り、政令で定める日(平成23年3月31日)までは就業規則等で定める基準に基づき継続雇用の対象者を選定が可能です。就業規則相談所でご相談ください。



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