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パワハラでうつ病発症は労災の可能性 (2010年1月号より抜粋) | |
パワハラで「うつ」発症と家族が業務上災害の申請を求めてきた |
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Q |
従業員の家族から、「うちの子は、上司のいじめが原因で、うつになった」と苦情を訴えられています。最近、労災保険の扱いが変わって、パワー・ハラスメントによる精神疾患も給付の対象に加えられたとも聞きます。今回のケースも、当社に責任があり、業務上災害になるのでしょうか。 |
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A |
平成21年4月、認定基準を改正 パワハラの負荷強度はV いわゆるパワハラ(パワー・ハラスメント)とは、「上司が職権を濫用し、本来の業務指示の範囲を超え、個人の人格を侵害するような言動を行う」ことをいいます。従来の労災認定基準(「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」平11.9.14基発第544号)でも、労災となる可能性を否定していたわけではありません。 しかし、なかなか認定に至らないケースが多いのが実情でした。その問題点がクローズアップされたのが、日研化学事件(東京地判平19.10.15)です。労働基準監督署長は、家族の「労働者の自殺は業務上災害だ」という訴えに対し、従来の認定基準を適用し、非該当と判断しました。 認定基準では、「職場における心理的負荷」「業務以外(家庭内等)の心理的負荷」「固体側要因(既往歴、性格傾向等)」を総合的に考慮して、業務起因性の有無を判断します。「職場における心理的負荷」が「強」と認定されなければ、業務起因性は薄いことになります。 従来、パワハラは「上司等のトラブル」の一種として処理されてきました。「上司とのトラブル」については、修正すべき特別の事情がない限り、負荷強度は「中(IからVの3段階のU)」とするという取扱い要領が示されていました。 これに基づき、労基署長も淡々と、特別の事情もないので心理的負荷は「中」であり、業務上災害に該当しないと判断しました。しかし、裁判所は正反対の結論を下しました(遺族勝訴)。 厚生労働省では、本事件等を踏まえて認定基準の見直し作業を開始し、平成21年4月6日付で改正を実施しました(基発第0406001号)。 新基準では、パワハラは「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」というカテゴリーに分類されます。今回改正では、新たに12種類のカテゴリーを追加(全43項目)したほか、判定の際の着眼点も詳細化しています。 「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」場合、修正すべき特別の事情等がなければ、負荷強度は「強(3段階評定のV)」と判定され、業務上災害とみなされる可能性が強くなります。
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