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家族が競合会社の社員の場合 (2010年5月号より抜粋) | |
営業秘密守るため従業員家族の就職先を申告させたいが可能か? |
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Q |
現在、社内機密の管理体制を見直し中です。本人だけでなく、家族経由で秘密が漏れるおそれも否定できません。「家族がどこの会社に勤めているか」、もっと正確にいえば、「同業他社に勤めていないか」、従業員に申告させるのは可能でしょうか。 |
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A |
家族情報の提出強要は避けるべき 家族の地位・職業等は、従業員の個人情報の中でも、センシティブな(機微に触れる)部類に含まれます。採用時については、「家族の職業などを調査することは、応募者の適性・能力に関係のない事柄を採用基準とすることとなり、不適切」であるため、企業が実施しないようハローワーク等が指導しています。 個人情報保護法では、「個人情報を取り扱うに当たって、その利用の目的をできる限り特定しなければならない」(第15条)と定めています。一般に利用目的として考えられるのは、「家族手当等の決定、社会保険関係、災害補償、育児・介護休業法の適用」などでしょう。 手当の申請等の場合、必要書類の提出を求めますが、「住民票等の写しは、画一的に提出を求めないようにし、それが必要になった時点(たとえば、慶弔見舞金が支給されるような場合で、その事実の確認を要するとき等)で、その使用目的を十分に説明の上提示を求め、確認後遠やかに本人に返却するよう指導すべき」(平9.2.21基発第105号)という解釈例規が示されています。 機密保持のためという大義名分があれば、会社が家族の職業等に口をはさむ正当な理由となるでしょうか。夫が同業他社に勤めているという理由で、妻を試用期間中に解雇した判例が存在します(ケイズ事件、大阪地判平16.3.11)。判決文では、「仮に秘密が漏洩するおそれがあるのであれば、秘密保持のための適宜の措置を取ればいいのであって、解雇の合理的理由とは認められない」と述べています。 貴社でも機密保持対策(誓約書の提出等)を強化するのが本筋で、家族情報の提出強要は避けるべきでしょう。
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