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在職中の不正と退職金の返還請求 (2010年9月号より抜粋) | |
在職中の不正が離職後に明らかになったが退職金金の返還請求は可能? |
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Q |
従業員が突然、辞表を持ってきて。理由もはっきりしないまま退職手続きを済ませました。後から不正の事実が発覚しましたが、今から退職金の返還を請求できますか。当社では、懲戒解雇者には、退職金を全都または一部支払わないと規定しています。 |
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A |
就業規則の文言によっては返還請求可能 懲戒解雇は、企業が科す制裁のうち、もっとも重いものです。制裁は、就業規則の相対的記載事項の1つで、制裁を科すためにはその種類。程度を明確に規定しておく必要があります(労基法第89条)。しかし、既に退職している従業員に対し、解雇(従業員たる地位を失わせる)という処分を科しても実質的には意味がありません。 このため、判例でも、「雇用契約が合意により終了している場合、会社の懲戒解雇の意思表示は無効」(ヤチヨコアシステム事件、大阪地半判平16・8・6)と述べています。 貴社の従業員も、懲戒解雇を逃れるため、先手を打って辞表を提出したのでしょう。しかし、退職後でも、退職金の支給規定を整備しておけば対処の余地があります。就業規則の相対的記載事項の中には、退職金も含まれます。 解釈例規では、「退職手当について不支給事由または減額事由を設ける場合は、手当の決定および計算の方法に関する事項に該当するので、就業規則に記載する必要がある」(平11・3・31基発第168号)と述べています。 就業規則(退職金規定)のなかで、たとえば「在職中の職務に関し、懲戒解雇事由に相当する事実が明らかになったときは、退職金を支給しないことができる」等の規定があれば、懲戒解雇できなかった場合でも、退職金の全額不支給(減額支給)が可能になります。「既に支給した退職金を返還させることができる」旨の規定があればさらによいです。 貴社のように「懲戒解雇に限って退職金不支給」という規定では、返還請求は難しいと考えるべきでしょう。
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