平均賃金の計算方法の特例 (2010年10月号より抜粋)  
     
 

入社10日で解雇した社員に1ヵ月分の賃金を払ったら平均賃金は?

 

Q

新規採用した社員(出社して10日)のちょっとした言動が気に障り、大人げなく声を荒げてしまいました。「1月分の給料は全額払うから、明日から来なくていい」と申し渡しましたが、後日、解雇予告手当の請求を受けました。単純に手当を計算するととんでもない額になりますが、支払う義務があるのでしょうか。

 

 
 
A

分母を30日として計算すればよい

採用した社員が試用期間中で、かつ入社後14日以内のときは、解雇予告の規定が適用されません(労基法第20条)。しかし、14日以内でも、試用期間を設けていなければ(最初から本採用なら)、予告が必要になります。懲戒解雇で労働基準監督署の解雇予告手当除外認定を受ければ、支払い義務は生じません。しかし、「言動にムッとして、解雇を通告した」というレベルでは、申請しても受け付けてくれないでしょう。

解雇予告手当は、平均賃金の30日分以上です。平均賃金は、事由発生日以前3ヵ月の賃金を、3ヵ月の総暦日数で除して計算するのが原則です(労基法第12条)。しかし、雇入れ後3ヵ月未満の場合、3ヵ月の計算期間を確保できません。この場合の取扱いは複雑なのですが、賃金締切日が1回も到来していないときは、「雇入れ後の期間とその期間中の賃金の総額で算定する」ほかありません(労基法コンメンタール)。

仮に、1ヶ月30万円で雇用契約を結んだとします。10日で辞めてくれ。ただし、賃金は1ヵ月分払う」と申し渡した場合、単純に平均賃金を計算すると、次のとおりになります。

賃金総額(30万円)÷総暦日数(10日)=3万円

1日3万円で解雇予告手当を計算すると、90万円(3万円×30日)になります。そのほかに、1月分の丸々30万円の支払い義務も残っています。まさに、「とんでもない」金額です。

本来的にいえば、10日分の賃金10万円に1月分(30日分)の解雇予告手当30万円、合計40万円の支払いで済んだはずです。しかし、退職に至る経緯が経緯なだけに、相手が話し合いに応じない可能性もあります。

こうした特殊なケースについては、解釈例規で次のとおり計算方法が定められています。

(昭45・5・14基発第375号)
賃金の全部または一部が月によって定められ、その期間中の欠勤日数に応じて減額されない場合において、平均賃金の算定期間が1賃金算定期間に満たないときは、次により計算した額とする。

  1. 賃金の全部が月によって定められている場合は、その賃金を30で除した金額
  2. 賃金の一部が月によって定められている場合は、その賃金を30で除した額とその他の賃金について通常の計算方法で算定した額を合算した金額

お尋ねのケースでは、欠勤控除がないので、30万円を30で除した額を平均賃金として、解雇予告手当を計算します。結局、1万円×30=30万円となります。

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