過半数労働組合と労使協定 (2010年11月号より抜粋)  
     
 

従業員の「過半数」という場合に管理職やパートも含めて計算するべきか?

 

Q

当社では、正社員のみを対象とする労働組合を相手方として労使協定を結んでいます。最近では、中高年管理職とパートの比率が増えたため、「過半数労組」といえるかどうか、議論のタネになっています。過半数を占めるという場合、管理職、パート、出向者等の扱いはどうなるのでしょうか。

 

 
 
A

すべての労働者を対象として過半数を判断

労働基準法上の労使協定は、「過半数労組がある場合は当該労組、ないときは過半数代表者」が一方の当事者となります。協定には、次のようなものがあります。

  1. 社内預金
  2. 賃金控除
  3. 1か月単位変形制
  4. フレックスタイム制
  5. 1年単位変形制
  6. 1週間単位非定形変形制
  7. 一斉休憩の除外
  8. 時間外・休日労働
  9. 長時間労働の代替休暇
  10. 事業場外労働
  11. 専門型裁量労働制
  12. 時間単位年休
  13. 年休の計画的付与
  14. 年休の賃金(健保の標準報酬日額とする場合)

個々の協定をみると、たとえば賃金控除協定は従業員全員が対象となります。しかし、変形労働時間制等の場合、適用される労働者が一部の部署・人員に限られるケースもあります。

制度の導入の可否を検討する際、利害関係者の意見を重んずべきなのは当然です。ですから、たとえばフレックスタイム制の協定を結ぶ際には、フレックス勤務予定者の過半数を代表する労組または従業員を相手方として選出すべきだという考え方もあり得るでしょう。

しかし、解釈例規(平11・3・31基発第168号)では、「対象となる労働者の過半数の意見を問うためのものではなく、事業場に使用されているすべての労働者の過半数の意思を問うためのものである」という立場を採っています。

協定の種類によって、制度の直接の対象となる従業員の範囲は異なります。しかし、「過半数」を占めるか否か判断する際には、一律、全従業員を対象とします。

管理監督者は、過半数代表者になることができません(労働基準法施行規則第6条の2)が、全労働者の範囲には合まれます。パートも労働者に該当するので、除外できません。

法整備に伴い、今後、育児・介護休業の取得者が増大すると予想されます。私傷病も含めた休職者、社外出向者など出勤が予定されない(制度が適用されない)従業員も労働者数にカウントします(前掲解釈例規)。

貴社労組が「全従業員」の過半数という要件を満たさなくなった場合、労使協定を結ぶ際には、別に「過半数代表者」を選出する必要があります。

適法に過半数代表者が選出されていない場合、労使協定は無効となります(トーコロ事件、平9・11・17東京高判)。しかし、もちろん、労組委員長が適法な手続きを経て、過半数代表となっても問題ありません。

▲画面トップ


 
  労務相談と判例> 労使の関係の相談

Copyright (C) 2010 Tokyo Soken. All Rights Reserved

東京労務管理総合研究所