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判例 持ち帰り残業も労働時間と認定 (2010年12月号より抜粋) | |
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過労死基準に該当する 労災不支給を取り消し 過労死というと、被害者は生活習慣病を抱えた中高年というイメージがあります。しかし、本事件で突然死したのは、大卒後1年半の若者でした。月間の残業時闇数は45時問を超えるレベル。労働基準監督署長は労災と認めませんでしたが、裁判所は長時問に及ぶ「持ち帰り残業」があった等の事実を踏まえ、労基署長の判断を覆しました。 K労基署長事件 東京地方裁判所(平22.1.18判決) 事件の舞台となったのは、有名ファーストフード・チェーンの小売店舗です。従業員Aさんは大学卒業後、チェーン店の正社員として働き始めました、しかし、それ以前、8年間、同じ企業グループでアルバイトとして働いた経験があり、正社員登用後まもなく第2店長代理を命ぜられました。 ファーストフード・チェーン等は「名ばかり管理職」「過重労働」などの問題で、訴訟事件が続いています。しかし、若者の好感度は高く、就職先としては人気が高いといえるでしょう。Aさんも、8年間のアルバイト生活後、同社を新卒後の就職先に選んだのですから、仕事に誇りと生きがいを感じていたと想像されます。 しかし、正社員として働き始めて1年半後、「突発性心室細動による急性心機能不全」で倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。遺族は労働基準監督署に労災給付(遺族補償年金・葬祭料)を申請しましたが、労基署長は不支給と決定しました。 過労死認定の壁として立ちはだかったのは、次の2点です。第1は、「全くの健常人に心室細動が起こるとは考え難く、何らかの基礎疾患があった可能性が高い」点です。これは医学的な問題なので、本欄では深く立ち入りません。裁判所は、「長時間で、ストレスの大きい労働は、自律神経に過度の緊張を来し、心室細動を引き起こす」可能性を否定しませんでした、ちなみに、Aさんは過去2年間の定期健診で異常所見はみつかっていませんでした。 第2は、「過去2〜6ヵ月の時間外労働は45時間を超えていたが、80時間に達していなかった」点です。労災保険の過労死認定基準(平13.12.12基発第1063号)では、「発症前の2〜6ヵ月の間に残業が80時間を超えるなど著しく過重な業務」があったか否かを、重視しています。 しかし、本事件で、Aさんはパソコン・システムを保全する責任を負わされていたのに、上司から休日出勤等を止められていました。結果的には、「持ち帰り残業」をするほかありません。裁判所は、「(持ち帰り残業を含めると、)時間外労働が月当たりおおむね80時間を超える範囲に達していた」と推認し、業務と疾病の関連性を肯定しました。 本事件は店舗管理業務ですが、たとえば、企画・立案・調査・分析等の仕事でも、若者が「やりがいをもって長時間労働にのめり込んでいく」ケースがみられます。「若者の過労死」という落とし穴は、案外、あなたのすぐそばで口を広げて待っているのかもしれません。
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