唯一交渉団体条項の有効性 (2011年3月号より抜粋)  
     
 

外部組合から団体交渉の申し込みあったが「慣行」を理由に拒否できないか?

 

Q

当社には従業員の大多数が加入する労組があり、長年、労働条件の交渉はその組合(A)だけを相手方としてきました。このたび、従業員の1人が外部組合に加入し、そちらの労組(B)から団体交渉の申し込みがありました。「他労組と交渉しない」という慣行が存在するという理由で、拒否できないでしょうか。

 

 
 
A

労働協約で定めたとしても法律上無効となる

労働組合法では、不当労働行為の1類型として「団交拒否」を挙げています(第7条第2項)。「正当な理由」がない限り、事業主が労組の団交申し込みを拒否することはできません。

団交の申し入れができるのは、「雇用する労働者の代表者」であり、労働者が組合を結成しているときは「労働組合の代表者またはその委任を受けた者」が交渉を担当します。貴社で「雇用する労働者」が2以上の労組に分かれて所属している場合には、それぞれの労組との交渉に応じなければなりません(労組法コンメンタール)。

しかし、会社と労組は自主的に団交ルールを定めることができます。長年の交渉を通じ一定のルールが形成され、協議の円滑化が図られているとすれば、それは労使双方にとっての財産といえます。

仮に会社と労組が「A労組以外とは団交しない」(これを「唯一交渉団体条項」といいます)と労働協約で定めた場合、その効力はどうなるのでしょうか。実際に世間でも、唯一交渉団体条項を結んでいる労使は少なくありません。しかし、解釈例規では「他の組合とは団体交渉をしないという意味であれば労組法違反を約することになり、現行法上無効の規定である」(昭25.5.13労発第157号)と述べています。貴社では「単独交渉の慣行」が存在するだけですから、なおさら拒否の理由とはなり得ません。

結論的にいえば、貴社の従業員が外部団体(労組)に単独加入し、その組合(B)から団交申し入れがあれば、応じる義務があります。労組の代表者が社外の人間(自社従業員でない)であっても、会社は交渉を拒絶できません。

それでは、従業員が外部団体に加入するのを防ぐため、A組合とユニオン・ショップ協定(ユ・シ協定)を結んでいたとすれば、どうなるでしょうか。

ユ・シ協定とは、過半数を代表する組合を相手方として、会社が「組合員であることを雇用条件とする(つまり、組合員でなくなったら、その者を解雇する)と約束する」協定のことです。

しかし、「ユ・シ協定は、締結組合から脱退し、除名されたが、別の組合に加入した者については、無効となる」(三井倉庫港運事件、最判平元.12.14)という判例が存在します。適法にユ・シ協定を結んでも、A労組員がA組合を脱退し、社外労組(B)に加入するのを防ぐことは不可能です。

労組法では、大多数労組と少数労組を区別することなく保護する建前となっているので、交渉相手を1つの労組に限定することはできません。

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