健康保険の移送費 (2011年3月号より抜粋)  
     
 

旅先で病気になった家族を私費で搬送した場合に実費を請求できますか?

 

Q

先日、従業員が旅行に行った際、家族が夜中に急病を起こし、薮急車を呼んで、大変な騒ぎになったそうです。仮に旅行地が辺鄙な場所で、救急車が手配できないために他の交通機関を使ったという場合、健康保険で実費請求が可能なのでしょうか。

 

 
 
A

経費・経路が合理的なら実費請求可能

健康保険では、療養の給村とは別に移送費という給付項目を設けています(健康保険法第97条)。病人が被保険者の家族(被扶養者)のときは、家族移送費となります(同第112条)。

療養の給付(および療養費)については原則3割の自己負担が課せられます。しかし、移送費には一定割合の自已負担額という考え方はありません。

移送費が支給されるのは、次の条件すべてを満たす場合です(健康保険法施行規則第81条)。

  1. 移送により法に基づく適切な療養を受けたこと

  2. 疾病・負傷により移動をすることが著しく困難であったこと

  3. 緊急その他やむを得なかったこと

具体例の1つとして、「離島等で疾病にかかり、付近の医療施設では必要な医療が困難であるため、最寄りの医療機関に移送された場合」が挙げられています(平6.9.9保険発第119号)。移送費の支給申請をする際には、必要事項を記載した医師・歯科医師の意見書および費用を証明する書類を添付しなければなりません(健保法施行規則第82条)。

移送費の額は、次の基準に従って算定します(実費限度)。

  1. 傷病の状態に応じ最も経済的な経路を取る。

  2. 最も経済的な交通機関の運賃を用いる。

  3. 医師が必要と認めたときは、付き添い1人分を支給。

  4. 天災その他のときは例外的取り扱いも認める。

ですから、かかった費用の一定割合が自己負担扱いになるようなことはありませんが、経路・交通手段が不適切なら、一部が填補されない可能性もあります

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