判例 定年者の再雇用拒否は違法 (2011年11月号より抜粋)  
   

 

 
 

解雇権濫用法理を適用 基準満たせば雇止め不可

厳しい経済情勢の下、高齢者の再雇用を拒否せざるを得ない状況も生じます。しかし、高年齢者法は、事業主に対し60歳代前半の「雇用確保措置」の実施を義務付けています。会社が高齢者の再雇用拒否という方針を貫いた場合、どうなるかという問題が生じますが、裁判所は「解雇権濫用法理」により難問の解決を図りました。

E社事件 京都地方裁判所(平22・11・26判決)


高年齢者法第8条では、「事業主は高年齢者雇用確保措置(定年廃止、延長、継続雇用制度)を講じなければならない」と定めています。この義務付けは「公法上のものであり、私法上の強行的効力を持たない」などと説明されます。

お役所は強行義務違反企業に対し、指導・助言・勧告をする権限を有します(高年齢者法第10条)。しかし、この規定に反し、企業が高年齢者を継続雇用しない場合も、「自動的に会社が再雇用したとみなす」ことはできないという見解が主流です。

結局、会社が契約終了を強行した場合、どういう結果になるのか、門外漢にはよく分からないのが実情でした。この問題に関し、最近、「解雇権濫用法理」を使って処理する裁判例がいくつか現れています。本事件も、その一例です。

会社は、労使協定により次のような再雇用基準を定めていました。

  1. 勤務意欲がある

  2. 体力的に勤務可能

  3. 勤務に支障のない健康状態

  4. 過去3年間出勤率80%以上

  5. 過去3年間普通以上の人事考課

  6. 過去3年間無断欠勤なし

一方、個別の労働契約書には、「業務の減少」「人員削減の必要があるとき」は契約を終了するという条項が盛り込まれていました。会社は、労働契約書に基づき、従業員が61歳に達した段階で、再雇用契約を更新しない旨、通知しました。これに対し、従業員側が雇止め無効を主張して裁判が起こされました。裁判所の判断を簡単に整理すると、次のとおりとなります。就業規則(再雇用基準等)と労働契約の内容が矛盾する場合、労働契約法第13条「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効」に基づき、就業規則の規定が優先します。

このため、判決文では、「就業規則で、再雇用に関し、一定の基準を満たす者については『再雇用する』と明記している。原告従業員は、再雇用の基準を満たすものとして再雇用されていたのであるから、64歳まで雇用が継続されるとの合理的期待があった」と認定しました。そのうえで、解雇権濫用法理を適用し、本件雇止めを無効と判示しています。

それなら、高齢者の解雇は絶対にムリかといえばそうではなく、整理解雇の要件に該当する等の事情があれば、話は別です。しかし、本件では、整理解雇の要件を満たすとはいえず、最終的に、雇止めは無効という判断に変更はありませんでした。

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