懲戒解雇と退職時の証明 (2012年6月号より抜粋)  
     
 

懲戒解雇者から「解雇の事実」は伏せてと頼まれたが応じるべきか?

 

Q

金銭の使い込みが発覚し、当社で懲戒解雇となった入物がいます。先日、当社に在籍していた証明(退職時の証明)が欲しいと連絡がありました。解雇については記載しないでほしいといわれましたが、応じるべきでしょうか。懲戒の事実を伏せておくのは、採用面接中の会社に対して無責任なような気がしてなりません。

 

 
 
A

退職時の証明には本人の希望しない事項を記載してはならない

使用者は、労働者から請求された場合、

  1. 使用期間

  2. 業務の種類

  3. その事業における地位

  4. 賃金

  5. 退職の事由(解雇の場合にあってはその理由)

を記載した「退職時の証明書」を交付しなければいけません(労働基準法第22条第1項)。

ここでいう「退職」とは、自己都合退職に限らず、退職事由のいかんを問いません。解雇も含まれます。証明の請求権の時効は、退職から2年です。

前記の5つの証明事項は、労働者から請求があれば必ず記入しなければなりません。しかし、「請求しない事項を記入してはならない」とも規定されています(同条第3項)。請求に応じ、解雇の事実等を記入しないのは、法に則した対応で問題ありません。

現在、面接・選考中の会社が不審を抱いて貴社に照会して来ることも予想されます。信義則からいえば、不都合な事実があれば伝えておくべきなのかもしれません。労働基準法の関係では、「事前の申し合わせに基づかない具体的照会に対して回答することは、本条の禁止するところではない」と解されています(労働基準法コンメンタール)。

しかし、お尋ねのケースでは、本人が解雇の事実およびその理由を明らかにしたくないという意思を容易に推認することができます。個人情報の保護という観点からも、他社からの前職歴照会については慎重に対応すべきです。

仮に問い合わせがあったときは、「重大な個人情報ですので、そちらの会社で本人と話し合っていただき、本人の同意がとれたら、情報提供に協力します」などと応じるのがよろしいでしょう。

▲画面トップ

 
  労務相談と判例> 退職、解雇の相談

Copyright (C) 2012 Tokyo Soken. All Rights Reserved

東京労務管理総合研究所