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判例 不更新条項に同意・署名した雇止は有効 (2012年11月号より抜粋) | |
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合理的期待を放棄した 雇止を有効と認める 雇止めをめぐるトラブルを防止するため、改正労働契約法が公布されました。本事件は法律施行前のものですが、長年、期間契約を繰り返してきた期間工が、「これで最後」という不更新条項契約に同意しました。その後、解雇権濫用法理の類推適用により、雇止め無効を訴えましたが、裁判所は「期待利益の放棄」を理由に労働者側敗訴という結論を下しました。 H技研工業事件 東京地方裁判所(平24・2・17判決) 改正労働契約法は平成24年8月10日に公布されましたが、「雇止め法理」に関する部分は「公布日から施行」とされています。雇止め法理のエッセンスは、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない雇止めは無効(同一条件で契約更新)とみなす」というものです。 改正労働契約法では、雇止めが無効となるケースとして (1)期間の定めのない労働契約と同視できる状態 を挙げています。それでは、(1)(2)の状態に至っているパート等を雇止めする場合、どういう方法があるのでしょうか。本事件は、この実務的疑問に答えるものです。 期間工Aは、自動車製造業B社で、途中に短い空白期間を挟みつつ、10年以上継続して働いていました。しかし、B社は経済情勢に伴う減産を理由として、すべての期間工を雇止めとする方針を決定しました。 会社側は事情を説明したうえで、「不更新条項が記載されている雇用契約書」の締結を求めました。Bは、契約書に署名し、契約期間満了時には異議を述べず、慰労金等を受給しました。しかし、その後、翻意して、雇止め法理により雇止めは無効であると主張し、裁判を提起しました。 判決文では、過去の契約更新の経緯等を踏まえ、Aが「B社に対して抱いた有期雇用契約の継続に関する期待は合理的である」と認定しました。労働契約法で定める前記(2)の条件を満たします。 本事件は、改正労働契約法の施行前のものですが、改正法は「最高裁判所判決で確立している雇止めに関する法理の内容や適用範囲を変更することなく規定したものである」(平24・8・10基発第0812第2号)とされています。 しかし、裁判所は最後に不更新条項(付)契約を結ぶことにより、「Aは期待利益を確定的に放棄した」と断じ、雇止めを有効と認めました。「放棄」の根拠として、「説明会の開催から本件契約書作成、提出に至るまで、期間工がB社からその意思を制圧されたり明白な虚偽の事実を申し向けられたりすることにより、契約締結の意思を形成する上で不合理な状況が存在したという事情は窺われない」という事実を指摘しています。 真塾に会社方針を説明し、不更新の同意を取り付ければ、雇止めは可能という結論が導き出されます。それでは「従業員が不更新に同意しない場合はどうなるか」という問題が残りますが、この点はまた新しい判例が登場した際にご紹介する予定です。
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