暦日をまたぐ勤務の割増賃金 (2013年1月号より抜粋)  
     
 

12時を超える残業の翌日勤務を免除したが残業の割増率は何%に?

 

Q

顧客の緊急要請に応じ、法定休日(割増率3割5分増し)に当社従業員を勤務させました。結局、作業は午後の1時から深夜の3時に及びました(途中休憩1時間)。長時間勤務の代償として、翌日(月曜)の勤務は免除としました。従業員は、「深夜の0時から3時まで、就労時間が8時間を超えているので、5割の割増が必要なはず」と主張しますが、そのとおりなのでしょうか。

 

 
 

始業時刻の繰り上げと解釈すれば割増不要

緊急呼出日の作業を、3つの時間帯に区切って考えましょう。

@日曜の午後1時から午後10時まで(途中休憩1時間で、実働8時間)
A日曜の午後10時から午後12時まで(実働2時間)
B月曜の午前0時から午前3時まで(実働3時間)

@はすべて休日労働なので、3割5分増しの割増賃金が必要です。

Aは、休日労働かつ深夜労働で、さらに当日の労働時間の累計は8時間を超えています。解釈例規では、「時間外・休日(36)協定において休日の労働時間を8時間と定めた場合、8時間を超えても深夜業に該当しない限り3割5分増しで差し支えない」としています(平11・3・31基発第168号)。

基本事項の確認になりますが、休日と時間外が重なっても、割増率は3割5分増しで足り、6割を支払う必要はありません。休日と深夜が重なるときは、6割(3割5分増しプラス2割5分増し)の割増賃金の支払い義務が生じます。

Bの労働は、午後12時をまたいで、翌日の時間帯に及んでいます。休日労働に関しては、「前日の勤務が延長されて法定休日に及んだ場合及び法定休日の労働が延長されて翌日に及んだ場合のいずれも、法定休日の午前0時から午後12時までの時間帯に労働した部分が3割5分増しの割増賃金を要する」と解されています(平6・5・31基発第331号)。

Bの時間帯は休日労働には該当しないので、3割5分増しの割増賃金を要さないことは明らかです。しかし、「継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱い、当該勤務は前日の労働として、当該日の『1日』の労働とする」という基本原則があります(昭63・1・1基発第1号)。

Bの時間帯をみると、深夜業であると同時に、当日(前日の日曜の労働とみなして)の労働時間の累計は8時間を超えています。深夜業の3割5分増しに加え、時間外の2割5分増しも必要ではないか、という疑問が生じます。

しかし、貴社では、月曜の所定就業時間の勤務を免除しています。「(休日の翌日の)午前0時以降の勤務が、労働日の所定労働時間を変更したものであれば、午前0時から午前5時までの間は2割5分増しの賃金で足りる」(平6・3・31基発第181号)という解釈例規があります。

翌日の始業時間を午前0時に前倒しした(午前3時以降の労働を免除)と解釈すれば、5割の割増は不要です。

※労働時間が暦日をまたいで連続していますので、この解釈は強引であると考えます。記事の通りの運用は危険であるというのが所長の見解です。

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