労働契約の無期転換規定への対応 (2013年6月号より抜粋)  
     
 

有期契約労働者を対象に「期間上限5年」の契約を新たに結びたい

 

Q

改正労働契約法により、「5年超の有期労働契約の無期転換」ルールが定められました。当社では、今後、1年契約を更新する際に、「更新回数は4回を限度とする」という条項を追加したいと思います。法律的に、問題があるでしょうか。

 

 
 

在籍者の同意取得が原則に

「無期労働契約への転換ルール」(労働契約法18条)は、「平成25年4月1日以後の日を契約期間の初日とする労働契約に適用」(同附則2項)されます。

既に長年、契約を更新してきた人に関しても、平成25年4月1日以降の更新日を起点として、有期労働契約の通算期間が5年を超えて、初めて無期転換申込み権が生じます。そこで、会社の立場からは「通算期間が5年を超えないように、何らかの歯止めをかけられないか」という発想が生まれます。

その対策の一つとして、「更新回数を限定する」という方法が考えられます。「有期労働契約の締結、更新及び雇止に関する基準」(平15・厚生労働省告示第357号)では、「使用者は、雇止の理由について証明書の交付を請求したときは、遅滞なくこれを交付する」よう求めています(第2条)。

解釈例規(平20・1・23基発第0123005号)では、この「雇止の理由」を列挙していますが、その中に次の例があります。

  • 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
  • 契約当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため

ですから、厚生労働省としても、「契約の当初に更新回数の上限を設ける」というケースを想定しているといえます。

ただし、「契約の当初」という表現になっている点に、注意が必要です。今後、新規に雇入れる人について、「契約の当初」から「更新回数を○回まで」という条件をつけることは可能です。

会社はこの条件に合意する人だけを雇入れ、合意者に限っては上限回数に達すれば淡々と契約を終了できます。

しかし、すでに何度も契約を更新している人について、新たに「更新回数の上限」に関する条項を加えるのは、一筋縄ではいきません。

前掲の解釈例規では、「更新の基準が労働契約の一部となっている場合には、その変更には労働者の同意を要する」と述べています。

労働契約法の解釈例規(平24・8・10基発0810第2号)でも、「契約期間の満了前に使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言した」としても、労働者の契約更新に対する合理的期待を否定することはできないと解説しています。

元々、更新回数の制限のなかった有期労働契約について、新たに「これが最後の1回です」「今後、契約更新は○回に限定します」といった条件を付加する際には、原則として労働者側の同意が必要です(もちろん、最終的には整理解雇に準じた雇止めという道は残されていますが)。

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