雇止め理由書の交付義務 (2014年10月号より抜粋)  
     
 

パートに雇止めを通告したら理由書を求められたが退職証明で代用可能か?

 

Q

パートに雇止めを通告したところ、「雇止め理由の証明書」を交付してほしいといわれました。実務上、「退職証明書」は聞いたことがありますが、「雇止め理由書」は初耳です。退職証明書を手渡せばそれで用が足りるのでしょうか。

 

 
 

交付義務あり、代用不可

労基法では、退職関連の証明書として3種類を定めています。よく似ていますが、根拠条文・目的に違いがあります。

  1. 退職証明書
    これは、労基法第22条第1項に規定があります。退職者は、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由(解雇の事由を含みます)について、使用者に証明書を請求できます。請求を受けた使用者は、遅滞なく交付する義務を負います。本証明書は、退職者が新しい就職先を探す際、求人者に示すものです。上記事項のうち、退職の事由のみの証明を求めることもでき、これを「退職証明書」と呼んでいます。
     
  2. 解雇理由証明書
    根拠条文は、労基法第22条第2項です。こちらは、労働者が解雇不当であると感じたとき、「解雇の予告を受けた日から退職の日までの間」に請求するものです。解雇をめぐるトラブルを迅速に解決するため、その理由(使用者の意思)を確認するのが目的です。雇止めは解雇ではないので、お尋ねのケースでは本証明書の請求対象から外れます。
     
  3. 雇止め理由の証明書
    労基法第14条に基づく告示(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平15・厚労省告示第357号)第2条を根拠とします。有期労働契約を3回以上更新した人、または雇入れから1年以上勤務している人を雇止めするとき、使用者は30日前までに予告する必要があります。この場合、労働者は雇止めの理由の証明書を請求できます。使用者は、遅滞なく交付する義務を負います。本証明書は、雇止めをめぐるトラブルの予防・迅速な解決を目的とします。

労働契約法第19条では、使用者が雇止めを通告した場合であっても、客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当と認められないときは、無効となる(同一内容で更新したとみなす)と規定しています。お尋ねのケースでは、労働者は、この規定に基づき雇止め無効を争う前提として、証明書を求めている可能性が大です。

有期労働契約を締結する際、労働条件通知書の中で「更新の有無・更新する場合の基準」を明示します(労基則第5条)。判断基準の記載例として、「期間満了時の業務量」「労働者の勤務成績、態度」「会社の経営状況」などが挙げられています(平24・10・26基発1026第2号)。

証明書に記載した雇止め理由が、労働契約締結時に示した基準に合致するか否かが、雇止めの有効性を争ううえで、重要な争点となります。


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