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判例 通院歴秘匿でも安全配慮義務あり (2014年11月号より抜粋) | |
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過失相殺を認めず 業務過重の判断は可能 メンタル不調者が、病状を上司等に申告したがらないのはムリからぬところです。本事件は、会社が私傷病休職期間満了で退職処分した後で、従業員が業務上だと主張して争ったケースです。最高裁は、「通院歴を申告しなかったとしても、欠勤等の状況から過重業務と認識できたはす」と述べ、2審判決を覆し、過失相殺を認めませんでした。 T社事件 最高裁判所(平26・3・24判決) 一昔前と比べると、うつ病患者等に対するイメージは大幅に改善されました。旧来の「精神病者」といった偏見は払しょくされつつあります。 しかし、個人情報保護法の関係もあり、メンタル不調が疑われる従業員がいても、上司はなかなか「立ち入った事情」を聞けないのが現状です。 本事件の原告従業員Aさんは、大学の理工学部を卒業し、被告メーカーB社に就職しました。B社では、巨大製造ラインの立ち上げプロジェクトを開始し、Aさんもプロジェクト・リーダーに選ばれました。 月70時間程度の残業に追われる中、Aさんはうつ状態となり、自宅近くの内科を受診し、抑うつ剤等の処方を受けました。 その後、他の製品開発等の仕事も担当するようになり病状悪化、長期療養等を経た後、私傷病休職期間満了により退職となりました。 Aさんは「病気は業務に基づく」ものと主張し、解雇の無効と安全配慮義務違反の賠償等を求めて裁判を起こしました。 1審・2審ともAさんの訴えを概ね認めています。ただし、2審では、「Aさんが神経科の医院への通院、その診断に係る病名、薬剤の処方等の情報を上司や産業医に申告しなかった」ことが対応の遅れにつながった等として、2割相当の過失相殺を行いました。 最高裁では、この過失相殺の是非等が論点となりました。最高裁は、「いわゆるメンタルヘルスに関する情報は、労働者にとって、自己のプライバシーに属する情報であり、人事考課等に影響し得る事項として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される情報である」と述べたうえで、「B社は、Aさんが体調不良であることを伝え、相当の日数の欠勤を繰り返し、業務の軽減の申出をするなどしていたものであるから、そのような状態が過重な業務によって生じていることを認識し得る状況にあった」と認定しました。 したがって、「状態悪化を防ぐために業務の軽減をするなどの措置を執ることは可能」であり、過失相殺することはできないという結論が導き出されました。 判決文の事実認定をみる限り、「会議中に放心状態になっていた」「同僚から見ても、仕事を円滑にできる状態でなかった」など、精神不調を推定できる材料には事欠かない状況にあったようです。「本人が黙っていたから」という言い訳は許されないという判断は、常識論からいっても首肯できるところでしょう。
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