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解雇予告期間中の労災 (2014年12月号より抜粋) | |
解雇を予告したら3日後にケガをしたが予定どおり契約終了可能か |
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Q |
遅刻や欠勤を繰り返す従業員に、普通解雇を通告しました。予告から3日後に、業務中に腰痛が発生したといって帰宅し、その後、ずっと休んでいます。30日が経過すれば、そのまま解雇手続を採って、問題ないのでしょうか。 |
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A |
業務上のケガなら解雇の効力中断 ご質問の方は「業務中に腰痛が発生した」といっていますが、業務上災害として申請する気があるのかどうか、確認の必要があります。 業務上災害であれば、健康保険の被保険者証は使えません。労災保険の「療養補償給付たる療養の給付請求書(いわゆる5号様式)」を医療機関に提出します(会社の証明が必要)。休業が4日以上(腰痛発生が所定労働時間内であれば、当日も1日とカウント)なら、休業補償給付等の請求も生じます。 加齢によるぎっくり腰等は、業務上災害の認定は難しいといわれます。本人が「医者に行かず、張り薬を使って、寝ていた」などというケースでは、なおさらです。 仮にですが、腰痛が真正の業務上災害だったとします。労働基準法では、「労働者が業務上の疾病で療養のために休業する期間およびその後30日間は解雇してはならない」(19条)と規定しています。この30日間は、「休業期間の長短に関わらないから、たとえ傷病による休業期間が1日であっても、その後30日間は解雇が制限」されます(労基法コンメンタール)。 ご質問にある方についても、腰痛が回復し出勤し得る状態に回復した日から起算して、30日間は解雇できません。 それでは、解雇の予告は無効になるのでしょうか。この点については、「解雇の効力発生が停止されるだけ」と解されています(前掲書)。この場合、考え方としては2とおりあります。 第1は、予告した解雇日が到来しても、その時点で「復職後30日経過」の要件を満たさないときは、解雇できませんが、制限期間が経過すれば解雇の効力が発生すると説きます。 第2は、制限期間の終了後、さらに残りの予告期間が経過して、初めて解雇可能という慎重な立場を採ります。休業前に3日が経過していれば、制限期間終了後27日経過した日が解雇日となります。 ご本人が「腰痛で休む」のは、解雇予告の効力を中断するためのほか、残った年休を使い切ってしまう目的である可能性もあります。年休の残日数が限度いっぱいの40日に近い場合などは、解雇予告期間の30日では、消化しきれません。30日といっても、年休権を行使できるのは所定労働日だけですから、20日前後です。 この場合、会社は年休の全消化を待つ必要はありません。「年休の権利は予告期間中に行使しなければ消滅する」(昭23・4・26基発第651号)からです。 しかし、腰痛により解雇の効力発生が停止すれば、その分、年休権を行使する範囲が広がります。いずれにせよ、本当に業務上の理由によるか否か、確認が必要です。
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