病者の就業禁止 (2015年1月号より抜粋)  
     
 

大事な仕事当日に体調不良で休んだ従業員に長期休職を命じられるか

 

Q

大事なお客様とアポイントメントを取った当日、体調不良で年休を申請してきた従業員がいます。それ以前にも、同様の事件を何度も起こしています。上司は激怒し、「健康を回復するまで、休職を命じたらどうか」といっています。本人が「就労可能」という診断書を持ってきた場合、どのように対処すべきでしょうか。

 

 
 

医師の診断を基に発令する必要がある

お尋ねにある従業員を休ませる場合、理論構成としては2種類考えられます。第1は、懲戒として「出勤停止」とするという方法です。もちろん、突然、発病した等の場合に、懲戒を科すのは酷です。

ご質問ではたびたび同様の事件を起こしているということですから、本人としても、万一の事態に備える(他の従業員でも対応できる準備を整えるなど)、あるいは健康管理に留意する等の対策を講じる余地はあったはずです。

それを怠っている点は、責任を追及する余地があるでしょう。しかし、たとえば数か月に及ぶ「出勤停止」を命じるなどは、量刑が不適当(過大)と判断される可能性が大です。

第2は、健康を回復するまで休業(療養)を命じるという方法です。本人が「安静加療を要する」等の診断書をもってくれば、問題ありません。本人から申し出がないとすれば、労働安全衛生法に「病者の就業禁止」(第68条)という規定が存在します。

事業者は、労働安全衛生法施行規則第61条で定める疾病にかかった労働者については、その就業を禁止しなければならないと規定しています。対象疾病は、下記のとおりです。

  1. 病毒伝播のおそれのある伝染性の疾病
  2. 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病性が著しく増悪するおそれのあるもの
  3. 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣がさだめるもの

ただし、現在、事業者がこの規定に従って講じられる措置は限られています。たとえば、1.については「感染症予防法で就業制限等の措置が定められているので、その規定に従うこと」とされています(平12・3・30事務連絡)。精神障害者については、「精神保健福祉法に基づき都道府県知事が行う措置に委ねる上(平12・3・30基発第207号)とされています。

また、安衛則第61条第2項では、「就業を禁止しようとするときは、あらかじめ産業医その他専門の医師の意見を聴かなければならない」と定めています。

その趣旨は、「就業禁止は労働者の就業の機会を失わせることになるので、専門医等の意見を勘案し、慎重に判断する必要がある」からです。

本人が「かかりつけ医」等に頼み、就労可能という診断書を持ってきた場合、会社が一方的に休職を命じることはできません。

お尋ねの従業員は身体に問題がなくても、「新型うつ」等を発症している可能性があり、専門医の診断を勧めるのがよろしいでしょう。

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