判例 正社員と同視して格差是正を命じる (2015年1月号より抜粋)  
   

 

 
 

パート労働法を適用 昇進の実績もほぼ同じ 

パート労働法では、「正社員と同視すべきパート」について正社員との不利益取扱いを禁止しています。本事件は、危険物配送のドライバー(準社員)が、格差の是正を求めたものです。裁判所は、地位確認は退けましたが、賞与の差額分等の損害賠償に関しては認容しています。

Nコーポレーション事件 大分地方裁判所(平25・12・10判決)


正社員とパートの間で、処遇に格差があることは衆目が認めるところでしょう。しかし、どの程度の格差があれば法に違反し、是正が求められるのか、その基準を示すのは簡単ではありません。

パート労働法では、「正社員(正確には「通常の労働者」という用語が用いられています)と同視すべきパート」に限定して、不利益取扱いを禁止しています。その他のパートに関しては、大部分は「均衡処遇に努めるよう」求めるにとどまっています。

パート労働法の改正により、平成27年4月1日から、「正社員と同視すべきパート」の範囲が変更されます。従来は、@「職務」A「人材の活用の仕組み(配転・転勤・昇進等)」B「期間(無期雇用)」の3要件の充足が求められていましたが、改正後は@Aのみで足ります(B「無期要件」は削除)。

「正社員と同視すべきパート」と認められると、賞与・退職金から福利厚生・教育訓練に至るまで、すべての労働条件について不利益取扱いが禁止されます。

本事件は、もちろん、法改正前の事案ですが、「不利益取扱い」に関する考え方は共通します。

裁判を起こしたのは、タンクローリーによる危険物配送等の業務に従事していたドライバーAさんです。Aさんは、前記の3要件をすべて満たすと主張し、格差是正を求めました。

会社Bには、正社員と準社員のドライバーがいました。正社員は1日8時間、年258日勤務、準社員は1日7時間、年291日勤務(8時間型の人もあり)でした。

正社員と準社員の業務内容は同じでしたが、会社Bは「転勤、役職任命等(人材活用の仕組み)に違いがある」「有期契約である」等の主張を行いました。

しかし、裁判所は「就業規則上、正社員のみに出向・転勤の規定があるが、正社員の転勤等実績はほとんどなく、転勤・出向面で大きな差がない」「チーフ、グループ長、運行管理者、運行管理補助者への任命の有無についても、大きく異なっていたといえない」と述べ、人材活用の仕組みは同一と認定しました。有期といっても、ほとんど更新拒絶がなく、無期に近いという判断も示しています。

結論的には、賞与等を中心として賃金上の差額について損害賠償の支払が命じられました。

本事件では、会社側の「就業規則上の違い」「緊急時発生時の責任の差異」等の主張は退けられています。形式的な規定の文言でなく、「実態を重視」した判決で、やや会社側に厳しい印象もありますが、「他山の石」とすべき事案です。

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