妊産婦の就業制限 (2015年2月号より抜粋)  
     
 

育児短時間勤務を断念する代わりに変形時間制の適用除外を要請

 

Q

育児休業から復帰する従業員がいます。本人は「復帰後は、短時間勤務を希望する」といっていましたが、話し合いでフルタイム勤務ということで合意しました。ところが、その後、「1ヵ月単位変形労働時間制ではなく、8時間の通常勤務に転換したい」と主張します。要求に応じる義務があるのでしょうか。

 

 
 
A

1歳を超えれば就業制限の規制外になる

法律的には、お尋ねの従業員が復職する時期がカギとなります。労働基準法の第6章の2では、「妊産婦等」に関する保護規定を定めています。妊産婦とは、「妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性」を指します(労基法第64条の3)。

妊産婦が請求により時間外労働を拒否できることは、労務担当の方ならご存知でしょう(労基法第66条第2項)。

それに比べ認知度が低いのが、変形労働時間制に関する制限です。

労基法第66条第1項では、「使用者は、妊産婦が請求した場合、1ヵ月単位変形労働時間制、1年単位変形労働時間制、1週間単位非定型的変形労働時間制を採る職場であっても、週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならない」旨、定めています。

請求が条件ですから、何もいわなければ、そのまま変形労働時間制で勤務させても差し支えありません。

また、フレックスタイム制については、自ら始業・就業時刻を選択できるので、制限の対象から除かれています。

お尋ねのケースで、ご本人が「産後1年を経過しない」時点で復職したのであれば、請求に基づき1週40時間、8時間を超える勤務を命令できなくなります。1ヵ月単位変形労働時間制を採る職場での継続勤務は、難しいといわざるを得ません。

しかし、法律の原則どおり、子どもが1歳(産後1年)に達するまで育児休業を取得した場合、妊産婦には該当しないので、労基法第66条に基づき変形労働時間制に基づく勤務を拒否することはできません。

ただし、労働基準法施行規則に「育児を行う者等に対する配慮」に関する規定がある点には、注意が必要です(第12条の6)。

同条では、「1ヵ月単位変形労働時間制、1年単位変形労働時間制、1週間単位非定型的変形労働時間制の規定により労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練または教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、必要な配慮をしなければならない」と定めています。

配慮義務ですから、「望ましい結果となるよう意を用いれば十分で、結果そのものを求めるものではない」と解されています。

しかし、ご本人は会社の要請に従って、短時間勤務の希望を取り下げています(育児介護休業法では、子が3歳に達するまで所定労働時間の短縮措置を受けられる旨、保障しています)。

できる限り、ご本人の要望に応えられるよう配慮を尽くすのがよいでしょう。

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