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雇用保険の日額特例 (2015年3月号より抜粋) | |
短時間勤務のパートが退職したが失業手当の優遇を受けられるか |
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Q |
パートが退職し、失業給付の申請をしました。当人は、以前、業務上のケガで労災保険も受給した経験があります。「あのときは、パートとして優遇措置を受けたけれど、今回、そういう特例扱いはなかったようだ」といいます。どういうことでしょうか。 |
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A |
週30時間未満は特例の対象外となる。 最初に労災保険の話をします。業務上のケガで働けない場合、休業4日目から休業補償給付が支給されます(労災保険法第14条)。休業補償給付は、1日当たり給付基礎日額(おおむね平均賃金と同じと理解してください)の60%です。このほか、休業特別支給金として同20%相当が上乗せされます。 平均賃金は、事故発生前3ヵ月(賃金締切日があるときは締切日から起算)の総賃金(ボーナス等は除きます)を総暦日で割って算出するのが原則です(労働基準法第12条1項)。しかし、時給・日給や請負給の場合、最低保障の特例があります(同条2項)。 時給制等の場合、算定期間中にたまたま欠勤が多いと、平均賃金が著しく低額となり、実態を反映しません。そうした不利益を緩和するのが目的です。 特例では、3ヵ月の賃金総額を労働日数で割って得た額に60%を乗じます。原則に従って計算した額(暦日数計算)と、この特例に従って計算した額(労働日数計算による額の60%)を比較し、高い方を平均賃金とします。労働日数が少ない場合、暦日数計算の額よりかなり高額になります。 お尋ねのパートの方は、この特例の適用によって、「思ったよりたくさんの休業補償給付をもらった」という印象を受けたのでしょう。 次に雇用保険ですが、基本手当の金額は賃金日額の50%〜80%の範囲で決まります(60〜65歳除く)。 賃金日額は、離職前の最後の被保険者期間6ヵ月に支払われた賃金総額(ボーナス等は除きます)を180で除して計算するのが原則です(雇用保険法第17条1項)。こちらも、時給・日給・請負給等を対象とする特例があります(同条2項)。こちらも、特例の趣旨は同様です。特例では、最後の被保険者期間6ヵ月に支払われた賃金総額を労働日数で割った額に70%を乗じます。 原則に従って計算した額(180日計算)と、この特例に従って計算した額(労働日数計算による額の70%)を比較し、高い方を賃金日額とします。 ただし、雇用保険の特例に関しては、「短時間労働者」については適用しないと定められています(「賃金日額の算定方法を定める告示」、昭50・労働省告示8号第4条)。 ここでいう短時間労働者とは、「通常の労働者と比べ1週間の所定労働時間が短く、かつ30時間未満である者」をいいます。 お尋ねのパートの方は、この規定に該当したため、特例の対象から除外されたと推測されます。労災保険と雇用保険では、同じ特例でも細部に違いがあります。
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