判例 裁判係争中に2回目の雇止め (2015年3月号より抜粋)  
   

 

 
 

雇止め無効で契約は自動更新 判断材料に変化なし 

労使トラブルが発生した際、経営者サイドは往々にして感情的な対応を採りがちです。本事件は、雇止めの効力を争っているうちに次の期間満了が到来し、その時点で「2回目の雇止め通告」を行ったというものです。裁判所は「継続への合理的期待性」を判断する事情に変更はみられず、雇止めは無効と判断しました。

F学園事件 福岡地方裁判所小倉支部(平26・2・27判決)


会社の経営者・従業員も人間です。人間関係がいったんこじれると、以前と同じ状態に戻るのは容易ではありません。

裁判所等の裁定に不服で、新たな紛争を引き起こすケースもあります。たとえば、解雇無効で復職が認められた従業員に対し、理由のない降格人事や出向命令等を発するといった話も耳にします。本事件は、雇止めをめぐるトラブルす。解雇と異なる点は、一度、解雇無効で契約更新が認められても、いずれ次の更新時期がめぐってくるという点です。

訴えを起こしたのは、短大の講師です。最初の期間満了時(1年契約)に、学校法人から雇止めの通告を受けました。納得しない本人が地位確認等の請求をし、争っている最中に2回目の期間満了時期が到来しました。そこで学校法人側は、「最初の雇止めが仮に無効であったとしても、2回目の期間満了をもって契約を終了させる」という通知(予備的な雇止めの通知)を行いました。

いわゆる雇止めルール(労働契約法第19条)では、対象となるケースを2種類に区分しています。

  1. 期間の定めがないと同様の状態に至っていた(第1号)

  2. 契約が更新されるものと期待することに合理的な理由がある(第2号)

この場合、他に正当な拒絶理由がなければ、契約は同内容で再更新されたとみなされます。

本事件では、契約内容が特殊でした。締結当時の規定では、「講師以上の契約職員の契約期間は3年。ただし、1年ごとの更新とする。契約の更新は、勤務成績、態度、業務上の必要性により判断する」と定めていました(翌年、一部を変更)。

ですから、裁判所は「更新の実績が一度もなかったものの、少なくとも3年間は継続して雇用され、その間に2回更新されると期待することについて合理的な理由がある」と述べました。

学校法人側は、勤務不良を雇止めの理由として挙げました。しかし、「体調不良による業務への支障は、年休0.5日、傷病休暇3日、振替休暇2日にとどまり、持病に由来する体調の悪化等によって業務に重大な支障が生じたとは認められない。育児により特段の支障を生じたとも認められない」と判断されました。

そのうえで、「1回目の雇止め通告の後、本件労働契約における雇用継続への合理的期待を基礎づける事情について変更はみられない」ため、2回目の雇止めも無効と結論付けました。

学校法人側の強硬措置は、空振りに終わったといわざるを得ません。感情的な対応は、良い結果を生まないという例です。

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