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判例 管理職降格はマタハラで無効 (2015年5月号より抜粋) | |
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軽易業務申請で報復措置 不利益的取扱いに当たる 本事件は、「マタハラ裁判」として社会的注目を集めたものです。妊娠中の女性が「軽易業務への転換」を求めたのに対し、会社が管理職からの降格を命じました。下級審は「業務上の必要に基づくもの」と判断しましたが、最高裁は、特段の事情がない限り、均等法が定める「不利益取扱い」に当たるとして高裁に差し戻しました。 H生協事件 最高裁判所(平26・10・23判決) マタニティーハラスメントとは、「妊娠した女性労働者に対して、いやがらせや退職を強要するような行為を行うこと」を指します。セクハラ、パワハラ、モラハラなど、ハラスメント関係の用語は増殖を続ける一方です。 本事件は、マスメディアでも大々的に取り上げられました。使用者サイドを非難する論調が強いようですが、実は、1審・2審では女性労働者サイドが敗訴していました。それほど、微妙な問題だったということです。 訴えを起こした女性は理学療法士で、副主任に任じられていました。妊娠後に、労働基準法に基づき「軽易業務への転換」(第65条3項)を請求したところ、副主任職を免ぜられ、育児休業後も原ポストへの復帰が認められませんでした。 均等法第9条3項では、「妊娠その他を理由(軽易業務への転換請求も含まれます)として、解雇その他不利益取扱いをしてはならない」と規定しています。管理職降格が、この「不利益取扱い」に該当するか否かが論点となりました。 下級審では、降格は「転換請求のみをもって(それを「理由」として)」発令したものではなく、「業務遂行・管理運営上、人事配置上の必要性に基づいて」行ったものであるから、違法とはいえないと判断しています。 背景として、「職能資格等の降格と異なり、副主任という『役職』の任免については、経営者側に大幅な裁量権が認められる」という考え方があります。 これに対し、最高裁は、まず「妊娠等を『契機』とする降格等は、原則として不利益取扱いに含め、労働者の同意または特段の事情がある場合は例外とする」という厳しい判断基準を採用しています。 次に、役職の任免であれば、自動的に経営者側の裁量権を認めるという考え方に疑問を呈しています。「勤続10年を経て就任した管理職から非管理職に変更されるという処遇上の不利益、管理職手当がなくなるという金銭的な不利益を受けている」「副主任の管理職としての職務内容の実質等が判然とせず、軽易業務への転換により業務運営にどの程度の支障が生じるのか明らかでない」 つまり、ライン管理職ではなく、処遇上の肩書きとして役職を付与されているのであれば、それを剥奪するにはそれ相応の理由が求められるという立場を採っています。 「軽易業務の管理職」というのは確かに論理矛盾ですが、「勤続の積み重ねによって得た身分・手当」は保護されてしかるべきという判断です。
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