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パートの休日出勤と就業規則 (2015年12月号より抜粋) | |
パートに休日出勤を命じたいが就業規則上の根拠規定だけで十分か |
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Q |
当社では、通常、パートに休日労働を命じることはありませんが、今般、緊急事態で一部パートを出勤させる必要が生じました。パート就業規則をみると、正社員に準じて「業務の都合上、やむを得ない場合には、時間外・休日労働を命じることがある」と規定しています。強制可能という理解でよいのでしょうか。 |
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A |
雇用契約に別段の合意があればそちらが優先される 休日出勤を命じる根拠として、就業規則上の規定は重要ですが、それだけでは十分といえません。まず、時間外・休日(36)協定をチェックする必要があります。 36協定では、時間外・休日労働をさせる理由、業務の種類、労働者数等を記載します。労働者数については、時間外・休日労働をさせることがある労働者の数を協定する」(労働基準法コンメンタール)という考え方になっています。パートを休日出勤させるためには、パートの担当業務に関して、パートも含めた労働者について、休日労働を可能とする協定が結ばれている必要があります。貴社では、「パートに休日労働をさせることを想定していなかった」のですから、36協定から漏れていた可能性も否定できません。 ちなみに、36協定の労働者側当事者は、過半数労組(ないときは過半数代表者)です。過半数労組が正社員のみで組織されていても、36協定ではパート等の非組合員も含めて、時間外・休日労働の上限を設定します。 ですから、36協定を結ぶ際には、時間外・休日労働の対象となる可能性のある従業員については、全員を含む形としておくのがよいでしょう。貴社の協定上、パートや嘱託等も労働者数にカウントされているか、確認してください。 次に、労働契約ではどのように合意していたかも問題になります。一般論でいえば、就業規則は労働契約に優先します。 労働契約法では、「就業規則の基準に達しない労働契約は無効」と定めています(12条)。しかし、「労働契約において、労使が就業規則と異なる労働条件を合意していたとき」(同7条)は、その合意内容が就業規則を上回る限りは有効です。 休日労働は免除という労働契約があれば、常識的に考えれば、「就業規則より有利な規定」であり、有効と考えられます。 採用時には、労働条件通知書を交付します。「休日出勤の有無」は労働基準法上は必要ないのですが、パート労働法では「明示が望ましい」とされています(平26・7・24雇児発0724第1号)。実務的にいうと、厚生労働省のモデル労働条件通知書には「休日出勤の有無」の欄が設けられています。 貴社がモデル労働条件通知書を使用し、「休日出勤なし」と記載して交付していると、労働契約上は休日出勤の義務がないと判断される可能性大です。 だとすると、就業規則上に休日出勤の規定があっても、強制は難しいという結論になります。パートとよく話し合って、同意を取り付けるのが適切でしょう。
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