雇入れ時教育と通勤災害 (2016年1月号より抜粋)  
     
 

パートの出社1日目は作業体験だが当日の出勤途上のケガは通災に?

 

Q

当社では、パートの採用後、出社第1日目は「作業上の注意事項の説明、作業の実体験」等の教育カリキュラムを実施しています。賃金支払いの対象となるのは、「現実に労務の提供を受ける」2日目以降という取扱いです。初日の出勤途上でパートがケガをしたという場合、労災保険の対象になるのでしょうか。

 

 
 
A

就労のためと認定され、通勤災害となる

通勤とは、「労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間の往復等」を行うことをいいます(労災保険法第7条2項)。お尋ねの事故は、「就労開始前の事前教育」を受けるために移動中に発生しています。

これは、「就業に関して」といえるのでしょうか。貴社では、現実の労務提供は2日目からという理由で、初日は賃金支払いの対象から除外しておられます。つまり、1日目については労災保険料も納付しない形となっています。

しかし、「作業説明・実体験」だから、労働時間に含まれないという考え方には疑問符が付きます。

労働安全衛生法では、雇入れ時の安全衛生教育の実施を義務付けています(第59条1項)。解釈例規では、「安衛法第59条の教育は、所定労働時間内に行うのを原則とし、法定時間外に行われた場合には、割増賃金を支払わなければならない」(昭47・9・18基発602号)と述べています。

また、一般論として教育については「就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がなく、自由参加なら時間外にならない(逆にいえば、強制なら労働時間)」という考え方が示されています(昭26・1・20基収2875号)。

貴社の第1日目のカリキュラムは、雇入れ時の安全衛生教育および作業に必要な教育訓練に該当すると考えられます。

ですから、初日の出勤も「就労のための移動」と認められ、労災保険(通勤災害)の申請も可能です。その代わり、当然の話ですが、第1日目から労働が開始したとして賃金計算を行い、労災保険料も納める必要があります。

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