社員死亡時の退職金の受取人 (2016年5月号より抜粋)  
     
 

就業規則に従業員死亡時の退職金支払い規定がないが問題ないか

 

Q

経営者の集まりで、従業員が在職中に死亡した際の退職金の話が話題になりました。最近、該当者の出た会社では、就業規則上に受取人に関する規定があったため、スムーズに手続が済んだといいます。人事部の者に調べさせたところ、当社の就業規則上にはそうした規定が存在しませんが、これは問題でしょうか。

 

 
 
A

民法上の相続人が退職金受取人となる

退職金(退職手当)は、就業規則の相対的必要記載事項です。記載する項目として、「適用労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払の方法、支払の時期」が挙げられています(労働基準法第89条第3の2)。

退職手当は、「就業規則等によって支給条件が明確である場合は賃金」です(昭22・9・12発基17号)。したがって、基本的には本人払の原則が適用されます。

しかし、従業員本人がお亡くなりになった場合、ご家族が受け取るケースもあり得ます。

受取人について、特に就業規則等でルールが定められていないときは、相続財産と考えて、受取人は民法上の相続人となります。

民法の第5篇2章では、相続人について定めています。貴社で、受取入に関する規定を定めていなくても、それ自体は問題ありません。

しかし、民法と異なるルールを定めることも可能です。一般企業で広く採用されている例として、「労働基準法施行規則第42条から第45条で定めるところによる」というパターンがあります。

労基則第42条では、次のような順序を示しています。

  1. 配偶者(内縁含む)

  2. 生計を一にしていた家族で、子、父母、孫、祖父母の順

  3. 生計を一にしない子、父母、孫、祖父母並びに兄弟姉妹の順

これは、本来、労働基準法に基づく遺族補償(第79条)の支払順序です。多くの企業では、これを業務上災害以外の事由も含め、退職手当の支払順序として準用しています。

こうした規定を置いておけば、相続という時間がかかる手続きを経ず、家族が直接の受給権者となります。

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