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判例 精算後は付加金を請求できない (2016年5月号より抜粋) | |
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法違反解消で権利消滅 控訴中でも結論は同じ 未払残業代がある場合、従業員は同時に付加金の請求ができます。裁判で争っている途中に本体の未払残業代を支払った場合、付加金の請求権はとうなるのでしょうか。本事件は、控訴中に会社が清算を行ったケースです。高裁は「それでも付加金の支払い義務がある」と判示しましたが、最高裁では会社側の逆転勝訴となりました。 N薬局堂事件 最高裁判所(平26・3・6判決) 労務管理がルーズな会社では、今でも「サービス残業」に類するトラブルが頻発しています。以前なら泣き寝入りしていた労働者が、弁護士等の力を借りて、裁判を起こすケースも増えています。 未払残業をめぐる裁判は、基本的には「出勤記録として残されなかった時間を労働時間と主張し、その分の賃金(多くは割増賃金)を求める」というパターンです。 しかし、労働基準法では、「未払い分の清算」だけでなく、一定額のペナルティーを課す規定を設けています。 労基法第114条では、次のいずれかが未払いであるとき、労働者は「未払金と同一額の付加金」を請求できると定めています。
元々の未払金に加え、「同一額の付加金」も払うのですから、会社にとっては倍返しの負担となります。 この規定については、3種類の解釈があります(労基法コンメンタール)。
裁判では、B.説が主流のようです。新井工務店事件(最判昭51・7・9)では、「裁判所の命令があるまでに未払金の支払を完了し義務津反が消滅したときは、裁判所は付加金の支払を命じることができない」と判示しています。 前置きが長くなりました。本事件は、第1審(東京地立川支、平24・3・28)の時点では、裁判所が未払賃金と付加金の双方の支払を命じました。しかし、会社が控訴し、高裁の判断を求めました。話がややこしくなるのは、高裁で争っている途中に、会社が未払賃金の清算を済ませたからです。 第1審で付加金を支払えという判決が出された後、「高裁の命令が出るまでの間に未払金を支払った」とき、付加金はどうなるのかという難問が発生しました。 第2審(東京高平24・9・28)は、付加金請求を認容しました。しかし、最高裁はその判断を覆し、「口頭弁論終結時までに義務違反の状況が消滅」すれば、裁判所は付加金の支払命令は出せないと結論づけました。 「付加金の性格」をキチンと理解しておけば、万一、裁判になっても、会社側としては慌てる必要ありません。
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