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判例 地震発生時の事業主責任 (2016年7月号より抜粋) | |
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安全配慮義務違反なし 予見できた規模を超える 平成28年4月、発生した熊本地震では、自然災害の恐ろしさを再認識させられました。従業員が職場で被災した際の会社責任を、過去の例を基に考えてみましょう。避難先の指定が不適切だったとして安全配慮義務違反が争われた事件で、裁判所は「当時得られた知見・災害情報からは、被災の予見は困難だった」と遺族の訴えを退けました。 S銀行事件 仙台高等裁判所(平27・4・22判決) 北で起きたかと思うと、今度は南の九州地方、まさに日本は地震大国です。地震に限らず、自然災害が発生した場合、事業主はどのような責任を負うのでしょうか。 事業主は、災害それ自体の発生を防ぐことはできません。しかし、災害発生時のリスクを予想し、それを回避する措置を講じる責務があります。 機械・原材料を原因とする事故の予防だけでなく、自然災害に対する備えも、安全配慮義務の一環として位置づけられます。 本欄では、平成23年に発生した東北地方太平洋沖地震を材料として、この問題を考えてみます。 裁判を起こしたのは、地震に伴う津波で亡くなった従業員の家族です。 当初、銀行は震災時の避難場所として、近くの山(堀切山)を想定していましたが、後から社屋の屋上を追加しました。津波発生当時、銀行の責任者は「屋上への避難」を選択しました。しかし、想像をはるかに超える大津波の到来により、屋上への避難者が被災する結果となりました。 遺族としては、「もしも山に逃げていたら」という無念の思いを拭い去ることができません。そこで、会社側の落ち度(安全配慮義務違反)として、3点を指摘しました。
社屋屋上を避難場所として選んだのは、宮城県防災会議地震対策等専門部会の報告書で示された最高水位予測に基づくものです。地震発生時に「それを超える大津波の発生を具体的に予見し得る情報」は存在していませんでした。 その後、より正確な情報が流れましたが、「避難場所を山に変更すると、屋上から山に移動の途中において津波に遭う危険性が十分に考えられる」状況にありました。 つまり、銀行のとった行動は、その時点で入手可能な情報等に照らして、決して不合理とはいえないものでした。 「人知」には限りがあります。企業が負う安全配慮義務は、「結果責任」ではないといわれます。大切なのは、事故が発生した場合でも、「配慮を尽くした」といえるだけの対策を講じておくことです。自社の防災対策がこのレベルに達しているかどうか、改めてチェックしてみてください。
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