|
自主研修は労働時間か (2016年8月号より抜粋) | |
社内研修の講師務めたべテラン社員に賃金を支払う必要あるか |
||
Q |
最近、公立学校のクラブ活動のあり方が問題となっています。顧問の先生は、望まなくても「ボランティア」的な貢献が求められるといわれます。当社では、技術の修得活動を奨励していますが、ベテラン技術者は同様の立場にあるのが実情です。賃金を支払わないと、問題があるのでしょうか。 |
|
|
||
A |
自主活動なら労働時間ではない。ただし例外あり。 研修・教育訓練等が労働時間に当たるか否かは、その内容によって異なります。解釈例規は、「受講者」の立場に立って解説していますが、「講師」についても、基本的な考え方は共通するといってよいでしょう。 まず、「労働時間」に当たるケースからみていきましょう。 労働安全衛生法では、「雇入れ時の安全衛生教育(59条)」「職長教育(60条)」等の実施を義務付けています。こうした安全衛生教育に関しては、「事業者の責任において実施されなければならないものであり、所定労働時間内に行うのを原則とする。教育の実施に要する時間は労働時間と解されるので、法定時間外に行われた場合は割増賃金が支払われなければならない」とされています(昭47・9・18基発602号)。 安全衛生教育を担当する講師についても、業務として行っていると解するのが自然です。ただし、安全衛生に関する知識を有するのは、管理職(スタッフ管理職を含みます)クラスの従業員でしょう。 時間外等の適用除外に該当していれば、「労働時間」と判断されても割増賃金の支払は要しません。 次に、「微妙なケース」をご紹介します。 法律上、義務付けられていなくても、多くの企業では、「技術水準の向上」等を目的として、各種の教育訓練やそれに類した活動が実施されています。 判断基準について、解釈例規では「労働者の教育への参加について、就業規則上の制裁等の不利益取り扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」(昭26・1・20基収第2875号)と述べています。 お尋ねの「技術修得活動」が自主的なものであれば、受講者については、労働時間に該当しません。若い従業員がベテランの職工さん等に「指導をお願い」し、本人が快諾したとします。 ベテラン職工さんが管理職に該当しなくても、「ボランティアのコーチ」ですから、時間外扱いする必然性はありません。 ただし、教育訓練担当者が参加を要請し、建前としては自由参加の形式を採っているなど、「実質的な強制」が疑われるケースも少なくありません。 過労死の事案ですが、判例では小集団活動を業務と認めたものもあります。裁判所は、「QCサークル活動は、事業主の事業活動に直接役立つものであり、使用者の支配下にある業務と認められる」(国・豊田労基署長事件、名古屋地判平19・11・30)という判断を示しました。
|
|
労務相談と判例> 労働時間の相談 |
Copyright (C) 2017 Tokyo Soken. All Rights Reserved