派遣社員へ募集情報の提供 (2016年9月号より抜粋)  
     
 

正社員募集に派遣社員が応募してきた場合にどこまで採用義務あるか

 

Q

経理部門で正社員を中途採用しようと検討を始めたところ、どこから話を聞きつけたか、営業部門の派遣社員が「自分も応募していいですか」と打診してきました。職場の人間関係は良好ですが、必ずしも能力優秀とはいえません。派遣社員の希望を知りながら、外部の応募者を採用した場合、何か問題がありますか。

 

 
 
A

優先して採用する義務は無い

お尋ねのケースでは、派遣法の関係で注意すべき条文が2つあります。第1は派遣法40条の4で、派遣先の「直接雇用の努力義務」を規定しています。努力義務が発生するのは、次の条件を満たすときです。

  1. 派遣先の同一の課・グループ等で1年以上派遣労働に従事

  2. 派遣の受入期間後に当該業務に従事させるために直用の労働者を雇い入れ

  3. 派遣労働者について、派遣元が直接雇用を依頼

「直接雇用の依頼」について、説明を補足します。派遣元は「同一の課・グループ等で1年以上就業した、または就業見込み等の有期雇用派遣労働者」に対して、「雇用安定措置」を講じる必要があります(一部努力義務)。安定措置の1つとして、「派遣先への直接雇用の依頼」が挙げられています。

貴社の正社員雇用はご質問にある派遣労働者とは別の部署ですから、他の条件を全て満たしたとしても、本条の適用はありません。

第2は派遣法40条の5第1項で、正社員の募集情報の提供を義務づけています。対象となるのは、次の条件を満たすときです。

  1. 同一の事業所等で1年以上派遣労働に従事

  2. 無期雇用派遣労働者を含む

  3. 事業所内で異動した場合含む

こちらは、「同一の課・グループ」という制限が付されていません。

貴社で正社員募集が本決まりとなれば、条件を満たす派遣労働者に対して詳しい募集情報を提供する必要があります。ただし、派遣労働者を「優先して」採用することまでは求めていません。

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