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判例 激励ではなくパワハラと認める (2016年9月号より抜粋) | |
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成績不良者に過剰な指導 幹部の職責を逸脱する 成績不良者に対して「一定期間内に成果が上がらなければ、退職します」と一筆書かせるのは、よく聞く話です。本事件は、そうした一連の行為がパワハラに該当するか否かが争われたものです。本人は「悪意はなく、叱咤激励の目的だった」と反論しましたが、裁判所はパワハラと認定し、降格もやむを得ないと判示しました。 M社事件 東京地方裁判所(平27・8・7判決) 好成績を上げるチームには、2種類のリーダーが車の両輪のように並存するケースが往々にしてあります。第1は兄貴肌で包容力のあるタイプ、第2は几帳面で規則違反には厳罰で臨むタイプ。 後者が嫌われ者の役柄に徹すれば徹するほど、前者の求心力が高まります。 本事件は、当人がどこまで意識していたか定かではありませんが、第2種のリーダーをめぐる裁判といえます。 Aさんは勤続22年で、「理事、担当役員補佐兼流通営業部長」というポストに就いていました。准役員補佐という立場ですから、会社への貢献が相応に認められていたのでしょう。 しかし、営業ノルマ未達成の部下に対するパワハラを理由として、突然、「副理事、担当部長」に降格されてしまいました。当人としてみれば、「私情・私怨ではなく、あくまで会社業績の向上を願って、部下に厳しく当たってきたのだ」という思いがあります。 長年、忠誠を誓ってきた会社の「冷たい仕打ち」を受け入れることは到底できません。一連の行為に「悪意はなく、叱咤激励に過ぎず、降格処分は無効である」と主張して、裁判を提起しました。 会社は、26項目の言動を理由として挙げした。裁判所はそれをふるいにかけたうえで、一部の言動についてパワハラと認定しました。 いくつか例をご紹介しましょう。
判決文では、「会社がパワハラ防止の経営指針を明らかにしていたところ、幹部としての地位、職責を忘れ、相反する言動を取り続けたものであるから、降格処分を受けることは当然」と結論づけました。 この種の従業員は、どこの会社にもいます。他の従業員の評判は悪くても、会社にとって有用な役割を果たしていることは否めません。しかし、行き過ぎがあれば、組織として処分を行う必要があり、人事管理上、参考となる判例といえるでしょう。
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