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判例 内規に基づく退職金請求を却下 (2016年12月号より抜粋) | |
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就業規則と異なり拘束性がない 慣行との主張も却下 会社実務では、「この問題は、内規に従って処理する」という言い方がよく使われます。本事件は退職金をめぐるトラプルですが、従業員側は功労加算がルール化されていたと主張しました。しかし、裁判所は「加算の根拠となる文書は内規に過ぎず、労働契約の内容として会社を拘束するものではない」と判断しました。 A空港事件 大阪高等裁判所(平27・9・29判決) 一言で「内規」といいますが、その実態はさまざまです。一部の管理職だけが内容を知っているケースもあれば、従業員全体がその存在・内容を知っているケースもあります。 後者の場合、内規といっても、正式な就業規則に近い位置づけになっているといえます。本事件は、この「内規」の性格が焦点となったものです。 A社では、従来(平成13年の改正以前)、退職金規程の中に「在職中に特に功労があった者に対する加給」の規程を設けていました。 昭和55年、A社は労働組合に対し、功労加算の基準を定める文書(昭和55年書面)を内規として交付しました。勤続年数と皆勤表彰を考慮要素とするもので、以降、この基準に従って功労金が支払われる状態が続いていました。 平成12年、会社は内規を改定し、翌年、退職金規程もそれに合わせて修正しました。新ルールは、「著しい貢献があり、担当役員の上申がある場合、退職金功労審議会にて審議する」というもので、従来に比べ、格段に厳しくなりました。ちなみに、改正後、功労金の対象となった従業員は生じていません。 訴えを起こした従業員Bさんらは、改定以前に旧ルール(昭和55年書面)の基準を満たしていた者については、加算が支払われるべきと主張しました。 裁判所は、書面の性格を判断するに際し、以下の諸点を指摘しました。
この事実に基づき、「昭和55年基準は就業規則として定められたものではなく、功労があった者の選定・支給額の運用基準として定めたものと認めるのが相当」「従って、労働契約の内容として会社を拘束するものではない」という結論が導き出されました。 本件では、「内規とする旨明記」「協定化を拒否」といった事情があったため、会社側が勝訴しました。 しかし、そうした立証の裏づけがないまま、「内規」なのか「就業規則の一部」なのか不明確な状態で放置されているケースも少なくありません。 社内の各種規定がどのような状態にあり、従業員がどこまで権利として認識しているか、確認しする機会を早めに設けるべきでしょう。
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