休憩の付与義務 (2017年2月号より抜粋)  
     
 

合計1時間の休憩を与えずに早帰りさせる規定に改正できないか

 

Q

当社の規定では、「残業が必要な場合、終業時刻後に15分の休憩を付与する」と定めています。しかし、若い従業員を中心として、評判が芳しくありません。「中途半端に休むより、早く仕事を終わらせて帰宅したい」というのです。労働組合とも協議のうえ、規則を改正するという案が出ていますが、問題があるでしょうか。なお、当社の1日の所定労働時間は8時間、昼休みは45分です。

 

 
 

法定の要件を満たさず不可

まず、休憩の与え方について、法定ルールを確認しましょう。使用者は、「労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間、労働時間の途中に与える」義務を負います(労働基準法34条)。

1日の所定労働時間が法定の8時間ピッタリという場合、「6時間を超えるけれど、8時間は超えない」ため、法的には45分の休憩を与えれば足ります。

しかし、1分でも残業が発生し、1日の労働時間が8時間を超えてしまうと、1時間の休憩が必要となります。この場合、「45分のほかにさらに15分の休憩時間を与える」義務が発生します。

法律上、休憩時間の分割に制限は設けられていません。45分プラス15分で、合計1時間という与え方も、もちろん、適法です。しかし、食事等の便宜を考えると、15分×4回のような規定は、現実的といえません。

貴社では、前記の法規定を根拠として、現行ルールを定めていると考えられます。厳密にいえば、「『6時間を超える場合』とは、始業後6時間を経過した際45分の休憩が与えられなければならないという意味ではなく、その『労働時間の途中』に休憩を与えなければならないという意味であって、休憩時間の置かれる位置は問わない。『8時間を超える場合』も、同様である」と解されています(労働基準法コンメンタール)。

貴社ルールのように、所定の終業時刻(始業から8時間経過)に達した時点で、直ちに15分を追加で与える必要はありません。その日の業務が終わるまでに、「途中」で15分の休憩を取れば足ります。

もっとも、所定労働時間が8時間の会社の場合、残業に入った時点で「休暇の追加付与」の義務が「確定」します。

「与え忘れ」を防止するため、「終業時刻後、直ちに付与」というルールが設定されたものでしょう。

所定労働時間が短い場合、一定時間の残業を行った後、はじめて労働時間が8時間を超えます。たとえば、1日の所定労働時間7時間の会社では、「残業時間が1時間を超えたら、追加で15分の休憩を与える」という形で、ルールを緩和することも考えられます。

1時間以内の残業なら、従業員の希望どおり、「早く終わらせて帰宅する」ことができます。

ただし、この方法を取る場合、管理職が先に帰宅してしまったとき、従業員が「残業が1時間を超えたのに、うっかりして休憩の取得を忘れた」というケースが起こりかねません。法的な趣旨をよく説明し、キチンと理解してもらう必要があります。

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